2019.04.30

世界フィギュア リアル観戦記③ 羽生結弦VSネイサン・チェン の合間に

A846d80286214acfb88dbcd38c9b3e32   

シーズン2018-19 フィギュアスケート世界選手権で初めてのリアル観戦の夢が叶い、リアルな会場の空気をどっぷり体験。リアル観戦客うぃリアル観察してわかったのは、競技会会場はネット世論の世界と全く別世界ということ。オーディエンスの質が全く違うのです。ネットで何と書かれても、選手の皆さんは全く気にすることはありません。

何ヶ月も前から情報を入手して、高価なチケット代を支払い、休憩を取得して、遠方の場合は旅や宿泊の準備もして、会場に応援に来ている上級ファンの眼差しは愛に満ちていて、マナーも完璧。長年の観戦で目も肥えていて知識も鑑賞力も確かだけど、自分が贔屓の選手だけでなく、全ての選手を暖かく応援してくれます。この愛に満ちた雰囲気の中で、存分に力を発揮できるはず。

それを目の当たりにしたのは、今回のハイライトとなった、羽生結弦VSネイサン・チェンのFS演技の合間。ネイサン演技の直前に巻き起こった暖かい声援と拍手を私は忘れません。ネイサンが失敗したら羽生くんが金メダル! 等と低レベルな邪念を一瞬でも抱いたのは私くらいで、会場のほぼ全員がネイサンに心からのエールを送ったのです。「ネイサン、頑張って!」の声援が、彼のメンタルに良い影響を与えたことは間違いありません。

テレビでは放映されないこのシーン。心あたたまるリアル観戦体験でした。

詳しくは、こちら

English

 

 

| | Comments (0)

2019.04.25

世界フィギュア2019 リアル観戦記

A807fb05932e48cfa6171199d6f8c733

2019年3月20日、21日、23日、さいたまスーパーアリーナに通い、フィギュアスケート世界選手権をリアル観戦してまいりました。

この大会の男女シングルの記録面でのニュースを勝手にランキングすると、↓こんな感じ?
1.エリザベート・トルシンバエワ選手の女子シングル、シニア初の4回転ジャンプ。
2.ネイサン・チェン選手のルール改正後のFS、総合点 世界記録更新。
3.羽生結弦選手のルール改正後初のFS 200点越え、総合点 300点越え達成。
4.アリーナ・ザギトワ選手のSP 演技構成点、羽生結弦選手のFS 演技構成点、ネイサン・チェン選手のFS 技術点の世界記録更新。
5.ジェイソン・ブラウン選手の4回転なしの構成での世界選手権 SP2位。
6.エフゲーニャ・メドベーデワ選手の世界初の3S+3Lo ジャンプ。

3/22の女子FSはTV観戦だったので、感動の瞬間に立ち会うことができませんでした。

ISU World Figure Skating Championships 2019

なお上記の記録が素晴らしいことは理解しつつ、観戦記は羽生結弦リスペクトに偏ってしまいました。

別サイトにアップしたかなりマニアックなレビューはこちら↓。

世界フィギュア2019 観戦記スタート!

アメージングオーディエンスの愛と共感

Love and Sympathy of Amazing Audience

羽生結弦、凄絶なるロマンティシズム

羽生結弦 SP「秋によせて」

羽生結弦 FSOrigin

羽生結弦 FSOrigin2

男子シングル レビュー 1

男子シングル レビュー2

書道で応援プロジェクト

ジェイソン・ブラウン SP

羽生結弦 Gala「春よ来い」1

羽生結弦 Gala「春よ来い」2

 

| | Comments (0)

世界フィギュア2019 リアル観戦記

D2af0a5ea0b7483485a1c41b81b79f2d

2019年3月20~24日、さいたまスーパーアリーナにて、ISU フィギュアスケート世界選手権が開催されました。国内開催、しかも会場は日帰り圏というチャンスを逃す手はありません。男子シングル偏愛ファンのYukaもS席を確保してアリーナへ通い、リアル観戦ならではの醍醐味を堪能してまいりました。別サイトにアップした、かなりマニアックなレビューをご覧ください。当サイトでも少し書いてみようと思います。

世界フィギュア2019 観戦記スタート!

アメージングオーディエンスの愛と共感

Love and Sympathy of Amazing Audience

羽生結弦、凄絶なるロマンティシズム

羽生結弦 SP「秋によせて」

羽生結弦 FSOrigin

羽生結弦 FSOrigin2

男子シングル レビュー 1

男子シングル レビュー2

書道で応援プロジェクト

ジェイソン・ブラウン SP

羽生結弦 Gala「春よ来い」1

羽生結弦 Gala「春よ来い」2

 

| | Comments (0)

2018.02.25

羽生結弦 エキシビション 「星降る夜 (The Swan)」 ―今、オリンピックのリンクから至高のスワンが翔びたつ

Enlight919

羽生男子シングル結弦さんの金メダル、宇野昌磨さんの銀メダル、女子シングル 宮原知子さん、坂本花織さんの名演技、ザギトワ VSメドベージェワの史上最高ハイレベルの闘い、アダム・リッポンの団体戦銅メダルなど、フィギュアスケ―トでも感動的なシーンが繰り広げられた平昌オリンピック。間もなく閉幕の日を迎えることになります。 フィギュアスケート ファンのお楽しみはあとエキシビションを残すばかり。そして、ここに羽生結弦さんのスワンが登場します。羽生さんのエキシビション・プログラムは、昨シーズンと同じ「Notte Stellata (The Swan)」。昨シーズンの終了後に書いたレビューが大学院のサイトに掲載されていますので、ご覧ください。

羽生結弦 EX「星降る夜」のスワンに寄せて

[getty src="619302654" width="594" height="388" tld="co.jp"]

2018年2月25日、平昌オリンピック閉幕。閉会式の前、オリンピックのリンクに至高のスワンが舞い降り、そして翔び立つ瞬間を見逃さないで!

別サイト AETICA.COM にもアップしています。

ファンのバイブル、羽生結弦さんの著作。印税収入が入るはずなので、ぜひ中古品でなく新品/正規品?で購入してあげてください。

  

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2018.02.17

羽生結弦、内なるスワンの飛翔

Embed from Getty Images

確信していた通り、羽生結弦が平昌オリンピックフィギュアスケート男子シングル競技の金メダルに輝いた。SP、FSともに負傷から長いブランクを経て復帰した現時点で最高の力を発揮して、素晴らしい演技を見せてくれた。4回転はリスクの高いルッツも可能性のあるループも回避して、サルコウとトウループを満点のGoe加点が付く出来で仕上げるという正しい判断。ほとんどのエレメントに2点、3点の加点が付くクオリティの高いパフォーマンスで世界中を魅了した。シニアデビューしたばかりの頃から応援している筆者にとっても嬉しい限りである。
エキシビションでは昨シーズンに引き続き、サン=サーンスの「白鳥」を現代風にカバーしたIl Voloの「Notte Stellata」で滑る美しいプログラムを見せてくれる。彼が秘め持つ美の本質が開示され、筆者の研究テーマでもあるクロスジェンダー・パフォーマンスに通じる至高のスワンがまた舞い降りるのが楽しみである。
否、彼の内なるスワンはエキシビションを待たずに既にオリンピックのリンクに舞い降りていた。フローレスな演技で世界を沸かせたSPでは、格調高いクラシック曲ショパンの「バラード第1番」で抽象性の高いテーマを表現しており、オリンピックのSPに相応しい作品に仕上がっていた。具体的なキャラクターを演じるのではなく、観る人の自由な解釈で演技者の本質を見つめることができる普遍性のあるプログラムであるが、筆者はこのSPで、彼の内なるスワンの存在を感じた。 迫力あるジャンプの着氷の美しさは野生の白鳥の湖水への着水を思わせ、指先まで魂のこもった手の動きは優雅で力強い翼のよう。そして、FS「SEIMEI」とは異なる雰囲気のシットスピンはまさにスワンのフォームである。タラソワのリクエストによるエキシビションのスワンはジョニー・ウィアーがトリノ・オリンピックで衝撃を与えた「The Swan」へのオマージュでもあることが覗えるが、SPの「バラード第1番」に潜むスワンは、羽生自身のスワンである。羽生のスワンは、至高の美しさ、優雅さ、高貴さを湛えながら、一種ワイルドで力強くエネルギーと情熱にあふれている。
羽生結弦が今日金メダルを獲得したのは、もちろん彼自身の努力の結果であるが、神憑りしたような強さと美しさに、内なる神聖なスワンの存在を感じてしまった。彼の内なるスワンが守護天使のように彼に憑き、不思議な力を吹き込んでいるかのようである。スワンは羽生が以前から好んで取り上げていたモチーフであるが、ソチ・オリンピックのエキシビションでも、ウィアーのスワンを思わせる衣装を纏いながらも、東関東大震災の被災者そして乗り越えつつある者として、ウィアーの原型から進化したスワンを演じたことが記憶に新しい。そして、金メダルを2回のオリンピックで続いて勝ち取った彼のスワンは、これからもさらに美しく進化し変容していく。その瞬間瞬間を見逃さないように、応援していきたい。
AETICA.COM WordPressブログも始めました。
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2018.02.16

羽生結弦くん、金メダルは君のもの!

4年間待ちに待った、冬季オリンピック、フィギュアスケート男子シングル個人戦が今日開催される。SPは午前中から開始という気の毒なスケジュールだが、全員の演技を堪能したい。

応援するのは、羽生結弦。彼が15歳のときから一途に応援し、成長を見守ってきたのだから。4回転ルッツ回避も、団体戦不出場も正しい判断。今日のこの日に最高の演技を見せて欲しい。

今日のSP「バラード第1番ト短調」(作曲:フレデリック・ショパン)も正しい選曲。振付は、ソチのSPと同様、ジェフリー・バトル。4回転ループをはじめ、すべてのジャンプの成功を祈っているが、瞬間瞬間の至高の輝きを見逃さないようにしたいと思う。SPでは具体的なキャラクターを演じるのではなく、抽象的な曲で格調高く滑るのが望ましいというのが私の考えだが、このプログラムは羽生の美の本質、スワンでもある。指先まで魂のこもった所作の全てを堪能したい。特に、スワンスピンと命名したいシットスピン。ここでの手の動きはまさに白鳥の翼。ジョニー・ウィアーの系譜にあるスワンが息づいている(と私は解釈する)。

フィギュアスケートにおけるクロスジェンダー・パフォーマンスの美を讃え、その意義を提唱してきたが、同時に常に羽生結弦を応援してきた。平昌オリンピックでも金メダルを手中にして欲しい。


フィギュアスケート男子シングル2016-17シーズン レビュー ~羽生結弦 EX「星降る夜」のスワンに寄せて~ [日本大学大学院総合社会情報研究科 電子マガジン68号]
http://atlantic.gssc.nihon-u.ac.jp/~e-magazine/068/essey/68essey1.htmlImg_1435


| | Comments (0) | TrackBack (0)

2018.02.12

アダム・リッポンの独創的なフラミンゴ

Embed from Getty Images

アダム・リッポンフラミンゴオリンピックのリンクで飛翔した。ノーミスに近い演技で、団体戦、男子シングルFSで3位、そして、アメリカチーム全体の健闘もあり、団体戦銅メダリストとなった。

彼がFSプログラムに選んだ音楽「フラミンゴの飛来」は、動物自然環境ドキュメンタリー映画『The Crimson Wing: Mystery of the Flamingos』のサウンドトラック曲であるが、彼のフラミンゴはワイルドながらナチュラルとは言えない。ファンタジックでシュールな、架空の鳥のようである。

前の記事でも触れた通り、筆者の研究テーマの一つは、ジェンダーを超越した美の表現、クロスジェンダーパフォーマンスである。この研究テーマで論じた修士論文と小論文において、フィギュアスケートにおけるクロスジェンダーパフォーマンスの象徴として取り上げたのは、ウルマノフプルシェンコ、そしてジョニー・ウィアーらの歴史的プログラムのモチーフとなったスワン(白鳥)であった。

ウィアーのスワンの衝撃がいまだに記憶に鮮明なこの美の領域を体現している一人として、筆者はアダム・リッポンを応援している。そして、リッポンが自身の美の化身としてスワンではなく、フラミンゴを演じたことに、新しい時代の到来を感じていた。リッポンのアクロバティックな動き、柔軟性、多様性に満ちたハイレベルなスピン、そして彼の身体のシルエットそのものが、まさにフラミンゴに相応しい。独創的で、明るく快活でエネルギーに溢れ、そして未知の空を自由に飛翔するフラミンゴである。悲劇的な美しさに満ちたスワンとは異なる、新しいタイプのクロスジェンダーパフォーマンスの境地がリッポンのフラミンゴの飛来をもって開かれたと言えるだろう。

リッポンのファンたちは、彼に4回転ジャンプの大技争いに参戦するより、優雅さな演技を期待しているようだが、彼は最高得点を獲得できる4回転ルッツの成功者でもある。転倒という結果であったが、全米選手権ではこのFSにも組み込んでいた。今回のオリンピック団体戦では回避しており、個人戦でも敢えて封印することも正しい選択と言えるだろう。そして、4回転ルッツを封印したとしても、或いは転倒したとしても、彼に銅メダルを狙える実力があることは最近の戦績が示す通りである。リッポンの独創的なフラミンゴは、より美しく力強く、そして高く遠くへ飛翔していく可能性を秘めているのである。

Adam Rippon Official Website

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2018.02.11

宮原知子のSP「さゆり」

Embed from Getty Images

団体戦予選の女子シングルSPを直前に控え、宮原知子のSP「さゆり」について大急ぎで調べた。モチーフは、昭和初期の京都、祇園を舞台にひとりの芸妓の生涯を描いた小説『さゆり』(原題:<em>Memoirs Of A Geisha</em>)。<!--more-->著者はアメリカの作家アーサー・ゴールデンの小説全米ベストセラー小説となり、日本では翻訳で出版された。
実は読んだことがないのだが、世界中に受容された日本美の様式が凝縮された文学作品なのだろう。オリンピックで表現するのに最適な素材といえるだろう。世界中の人がまさに「観たい」日本の美を見せてくれる。しかも、フィギュアスケートで。
宮原の「さゆり」は、全体で作品の世界観を表現するだけでなく、ステップで日本舞踊を舞う。フラメンコやバレエをフィギュアスケートで表現するよりずっと難しい。高難度な文化翻訳である。衣装は可憐なペールピンク。特に和服の要素は感じられないが、舞妓の少女をイメージさせる秀逸なデザインである。記憶する限り、宮原が競技で初めて着るカラーであるが、実によく似合う。これまでの優等生宮原に欠けていた、というより封印されていた本来の魅力を十分に引き出している。
世界最高レベルの彼女のスピンも、期待されている「和」の美を表現するのに相応しい。団体戦女子SPでは、着実に要素をこなして彼女本来の魅力を発揮して、世界中を魅了して欲しい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

宇野昌磨の四季交響曲「冬」

Embed from Getty Images

ついに幕開けた冬季オリンピック。今回のプログラムを紹介しながら、フィギュアスケート選手たちへ直前、いや最中のエールを贈ることにする。最初に取り上げるのは、最初の栄光に輝いた宇野昌磨団体戦予選でいち早く幕開けたフィギュアスケーターたちの闘い。男子シングルでは宇野が圧勝し、日本チームにとって幸先の良いスタートとなった。

個人的には、オリンピックのフィギュアスケート競技に団体戦を加えることは反対である。選手たちが心身ともに消耗し不調をきたす恐れがあり、個人戦を控えての団体戦で十分に実力を発揮できない場合もある。ソチ・オリンピックでの浅田真央の個人戦SP(ショート)でのあり得ない失敗や、団体戦で大活躍しロシアを金メダルに導いたユリア・リプニツカヤの個人戦での不調、そしてプルシェンコのSP直前練習中の負傷、棄権などが記憶に新しい。そして、2月9日午前に開催された団体戦予選男子SPも、10名中8名が転倒し、今シーズン最悪とも言える結果となった。
Results - Team Event Men Single Skating Short Program
Team Event | Men Single Skating Short Program | FRI 9 FEB 2018

オリンピックでフィギュア団体を実施すること自体に疑問を感じる人も少なくないだろうが、宇野昌磨にとっては、そのような心配も議論も無用である。どのような状況においても平常心でその時点において到達しているベストを尽くすことができる。4回転フリップで手をついたものの得点源の後半のジャンプを加点付きの出来でこなしてリカバリーし、初めてのオリンピックの舞台で100点越えの高得点を上げた。

世界中のフィギュアスケートファンを感動させ、また彼自身のアスリートとしての名声を高めたSPプログラムは、ヴィヴァルディ作曲、四季 協奏曲第4番 「冬」。かつてステファン・ランビエールパトリック・チャンが本領を発揮した格調高くも独創的な表現に適した曲である。振付は、コーチでもある樋口美穂子。オリンピックで金メダルを目指す選手たちFS(フリー)に選ぶのは、大技の4回転ジャンプを盛り込むのに似合う男性的な迫力のある曲である。宇野のFS「トゥーランドット」も例外ではない。しかし、それだけでは宇野の魅力を表現しきれない。彼の持つ力強さだけでない、繊細な感性、具体的な人物を演じるプログラムでは出しきれない、純粋で抽象的な美の領域。それを表現できるのがこのプログラムである。昨シーズンのSP宇野の魅力を知り尽くした樋口コーチの判断は正しい。昨シーズンのSP「ラヴェンダーの咲く庭で」も抒情的な一面が際立ち、ダイナミックなFS「トゥーランドット」との対比が絶妙だったが、抽象性を増した今回の「四季」にはオリンピックに相応しい洗練が加わっている。

オリンピックに合わせてイメージチェンジしたというヘアスタイルを宇野自身は気に入っていないとのことだが、「四季」の「冬」に似合う儚げな華やかさが漂う。技で勝負してくるネイサン・チェンボーヤン・ジンハビエル・フェルナンデスにはない魅力も際立ってくることだろう。

ノービス時代から大人顔負けの華のある演技で定評があり、シニアデビューしてからも成長甚だしい宇野昌摩。最初のジャンプでミスのあった演技で103.25点の出来であるから、まだ伸び代がある。最高の演技はぜひ個人戦で披露できるようにコントロールして欲しい。

宇野昌磨オフィシャルサイト

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2018.02.10

祝・平昌オリンピック開幕! フィギュアスケート男子シングルにおけるクロスジェンダー・パフォーマンスの行方は?

Pyeongchang_2018_winter_olympics

平昌オリンピックが開幕した。自分の応援専門分野である男子シングルで特に注目している選手は、日本の3選手の他、アダム・リッポン(アメリカ)とミーシャ・ジー(ウズベキスタン)。いわゆる4回転ジャンパーではない彼らを選ぶのは、「フィギュアスケート男子シングルにみるジェンダー・クロッシング 」が私の研究テーマの一つだから。

トリノ、バンクーバーでジョニー・ウィアーが開いたクロスジェンダー・パフォーマンスの系譜にあるジェンダーを超えた美しさに溢れる演技を、今は彼らに観ることができるだろう。もっとも、彼らはウィアーの後継と言うより、ウィアーと同時に彼ら独自のスタイルとしてこの種のパフォーマンスを追究していた。

トリノバンクーバーの頃は、ウィアーの"flamboyant"な演技やコスチュームが物議を醸し出した。また、ソチ・オリンピックでは開催国ロシアで開幕前に「同性愛宣伝禁止法」が施行されたこともあり、フィギュアスケートでは特に目立つ、テレオタイプ的ジェンダー規範を逸脱した演技や選手のセクシュアリティについて、メディアが頻繁に取り上げていた。しかし、今回はそのような動きは特に見られないようだ。クロスジェンダーパフォーマンスは、フィギュアスケートにおいても、美の様式として確立し認知されてきていると考えてよいだろう。

アダム・リッポン、ミーシャ・ジー、そしてビールマンスピンが得意なマイケル・クリスチャン・マルティネスをはじめとするクロスジェンダー・パフォーマーたちには、フィギュアスケートならではのジェンダーを超越した美の真骨頂をぜひオリンピックのリンクで極めて欲しい。特に、リッポンはノーミスの精度の高い演技を極めるか、あるいは4回転ルッツを成功させることができれば、銅メダルも夢ではない。クロスジェンダー・パフォーマンスに秘められた可能性と強さをオリンピックのリンクで印象づけて欲しいと思う。

そしてまた、4回転ジャンプで超高得点を叩きだし金メダルを目指す選手たちにとっても、クロスジェンダー・パフォーマンスは重要である。ジャンプが進化し尽くした先に、差を付けるのは、技と力の対極にあるかのような優雅さや柔軟性、そして抒情性、精神性と言った要素に他ならない。もっとも、演技構成点でも高得点を獲得できる選手たちは既にそれを心得ているだろう。その意味でも、羽生結弦宇野昌磨に期待している。強さを超えた美しさを表現する能力、ジェンダーを超えた至高の美の力を既に彼らは備えていると、私は信じている。

フィギュアスケート男子シングルにみるジェンダー・クロッシング ―21世紀初頭のオリンピックにおけるパフォーマンスから―  [日本大学大学院総合社会情報研究科紀要 No.16, 113-124]

※WordPressにサイト「AETICA.COM」を開設しました。重複した記事を掲載する場合もあります。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

2018.02.08

最強の少女たちへ(4)  宮原 知子

2015_grand_prix_of_figure_skating_2

宮原知子(19歳)は「ミス・パーフェクト」とも「努力の天才」と呼ばれていた。どちらにしても優等生タイプだが、ロシアの最強天才少女たちに匹敵する実力を備えている。彼女の強さは安定力である。しかも、浅田真央とは異なり3Ltzジャンプが得意なので、着実に高得点を確保することができる。また、スピンは現役女子シングル選手の中でもトップレベルの出来であり、美しく多様性豊かな回転を見せてくれる。彼女は「努力」の面が強調されることが多く、実際に相当な努力家なのだろうが、それ以前に才能にも恵まれていたことも事実だろう。そして顔立ちも可愛らしくなかなかの美少女でもある。ところが「努力」のキャラクターが擦りこまれ、「天才」ではなく「秀才」と定義されてしまったせいか、彼女が生来備えている美しさに注目が及ぶことはあまりない。

昨シーズン、パーフェクトな秀才だった宮原が積み上げてきた「安定」が崩壊した。股関節の疲労骨折という努力の過剰が招いたような故障をきたし、休養を余儀なくされたのだ。かつてグレイシー・ゴールドが同じ理由でGPファイナルを欠場してから低迷が続いていることからも、復帰は決して容易でないことは想像がつく。エース不在の影響は大きく、この間に登場し急成長を遂げた三原舞依の活躍もあったが、結局日本は女子シングルの出場枠を3から2に減らしてしまった。

しかし、宮原は、1シーズンの休養後、見事に復帰を果たした。ジャンプでかつてはなかった回転不足を指摘されることがあり、課題を残しながらではあるが、GPシリーズアメリカ大会優勝、GPファイナル出場、日本選手権優勝の実績をあげ、エースの座を奪還するとともに、オリンピック代表の座を手にした。「ミス・パーフェクト」の完成度は戻ってきていないが、この機会に真面目な秀才という既成のキャラクターを超えた、彼女本来の魅力を発揮して欲しいと思う。身体的にはまだ最強レベルまでは回復していないようだが、それを補うに足りるメンタルの強さ、表現力の高さを彼女は備えている。

平昌オリンピックに臨むプログラムは、SPの「サユリ」、FS「蝶々夫人」ともに和もの。ステップシークエンスでは、日本舞踊をフィギュアスケートに文化翻訳するという斬新な試みに挑み、所作や表情、抑制と勢いのある凛とした動きに日本的な美しさが宿っている。オリンピックで披露するに相応しいこれらのプログラムで、世界に向けて新解釈の日本の美、そして19歳の彼女の美しさを披露して欲しい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

最強の少女たちへ(3) 坂本花織

坂本花織(18歳)の現時点での世界ランキングザギトワコストナーソツコワに次ぐ第4位。欧州選手権で復帰したばかりのメドベージェワの上を行く。

Kaori_sakamoto_2017jwc

ザギトワ同様、今シーズン、シニアデビューしたばかりの彼女だが、あっという間に頭角を現し、四大陸選手権では金メダルを獲得した。彼女もまた、最強少女の一人であるが、今までの女子シングルスケーターにはない、ユニークなタイプである。気取りのない、あっけらかんとした強さ。毎回のように自己ベストを更新し、「やったーー!!」と万歳をして喜ぶ姿が微笑ましい。いわゆる美少女ではないが、そんなことを気にする人は一人もいない。ナチュラルな美しさに溢れていて、眩しいばかりだ。

全日本選手権で第2位に入り、2枠しかないフィギュアスケート女子シングルのオリンピック代表の座を手中にした。当時の時点で実績と世界ランキングで上回る樋口新葉を退けての決定だった。ソチ・オリンピックの後、多くの選手がこの座を目指して励んできた中、今シーズン登場したばかりの彼女があっけらかんとさらった結果となった。しかし、やっかみを言う声は聞こえない。彼女の底抜けの明るさ、勝機を掴みそうな勢いに、どんと任せて応援したいという気持ちになるのだ。

彼女のあっけらかんとした強さは、演技にも還元されており、ジャンプをはじめとする技の完成度は高く、回転不足やミスを指摘されることも稀である。また、FS「アメリ」の演技では、かつて高橋大輔がステファン・ランビエールの振付で演じた同題のエキシビション プログラムにも劣らぬ、繊細な美しさに溢れている。映画の世界を等身大の自分の感性で演じ切る表現力を備えているのである。

平昌オリンピックのフィギュアスケート日本選手団の中でも、彼女の明るさは他の選手たちをも照らしてくれるだろう。仲間にポジティブな覇気を与えつつ、自分もさらに成長し続ける強さが、彼女にはある。

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

最強の少女たちへたちへ(2) アリーナ・ザギトワ

800px2018_ec_alina_zagitova_2018011

メドベージェワ不在の好機を捉えたのがアリーナ・ザギトワ (15歳)だった。清楚で庶民的な感じもするメドベージェワとは異なり、15歳とはいえ華やかな雰囲気が漂う選手である。もっとも、3Ltz-3Loという基礎点の高いコンビネーションジャンプを武器とする彼女には、メドベージェワに挑むのに十分のポテンシャルがあった。また、GPシリーズではSPでこのコンビネーションで転倒して大きく出遅れながらもFSで高得点を上げて逆転優勝し、メンタルの強さでも定評があった。GPシリーズの2大会およびファイナルのFS「ブラックスワン」には恐ろしいほどの気迫が感じられた。

ザギトワは、メドベージェワが棄権したGPファイナル、そして不出場となったロシア選権で優勝した。そこまででシニアデビューしたばかりの彼女には十分な偉業だったが、留まることを知らないザギトワだった。好機が到来したとはいえ、挑む相手は歴代世界最高得点の保持者メドベージェワ。レベルが高すぎる相手に挑むため、欧州選手権でザギトワは攻撃的に攻めた。FSですべてのジャンプを後半に跳ぶという女子選手としては世界初の構成で挑み、メドベージェワを上回る高得点を叩き出した彼女は、ついに優勝を手にしたのだった。しかし、点差は僅か。女王メドベージェワの時代から、2トップの時代に突入したと言えるだろう。オリンピックを目前に最高に面白い展開を見せてくれた。

不運なことに、彼女たちには無関係のソチ・オリンピックでのドーピング事件により、平昌オリンピックのロシア選手団の出場禁止が決まり、フィギュアスケート選手たちも個人選手として参加することになった。しかし、メドベージェワもザギトワも、薄幸の美少女で終わることは決してないだろう。いや、むしろこの流れをも自分に有利な方へ変えてしまうかも知れない。団体戦で消耗することなく、強さを温存したまま個人戦に集中できるのだから。間もなく開幕するオリンピックでの二人の演技に期待する。凌ぎ合う二人の影でロシア ナンバー3の座に甘んじながら、一見地味に自分の演技を追究しているマリア・ソツコワの演技にも。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

最強の少女たちへたちへ(1) エフゲニア・メドベージェワ

2015_grand_prix_of_figure_skating_f

最強の女子シングル選手として真っ先に目に浮かぶのは、もちろんエフゲニア・メドベージェワ (18歳)。ロシア選手権、欧州選手権の王座は奪われたものの、SP、FSともに世界歴代最高得点記録保持者の地位は保持しており、文字通りの最強を誇る彼女に敬意を表し、最初に取り上げることとする。

あまりにも性急に天才を輩出するロシアのフィギュアスケート界。毎年新たな「天才少女」が登場し、新シーズンにシニアデビューした天才が2年目の天才を凌駕する年が続いていたが、勝ち続けることでその流れを破ったのがメドベージェワだった。

ジャンプは全て必ず加点のつく片手を上げるスタイルで跳ぶという必勝法は彼女が確立した。スピン、ステップも全て最高難度で加点付きの出来。演技構成点も上がるポイントを押さえたプログラムを完璧にこなすので、誰も追いつけないほどの高得点を上げてきた。そして何より、表情豊かでストーリー性のある表現が感動的だ。

前シーズンまでは非の打ちどころのない強さを見せつけてくれた「絶対女王」だったが、今シーズン前半のGPシリーズでは、他を凌ぐ高得点で優勝したものの転倒する場面が見られた。痛がる素振りも見せずに笑顔で流していたので「ハプニング」程度のことと重く受け止められなかったが、実は右足中足骨骨折というハンディを背負っていたという。負傷を承知で出場させるロシアのスケート連盟の判断は理解に苦しむが、彼女自身の忍耐力と意思の強さ、そして骨折をカバーしながらも高得点を獲得できる技術の高さに改めて驚嘆した。

前後にデビューした選手たちも、女王メドベージェワに牽引されるかのように、演技のレベルを上げるとともに、メンタル的にも強さを増してきたに違いない。そして、羽生結弦不在の男子シングルと同様、絶対王者の不在の間、他の複数の2番手の選手たちに優勝するチャンスが平等に与えられた。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

最強の少女たちへ(序)

00img_1755

オリンピックシーズンである2017-18シーズン、フィギュアスケート男子シングルでは昨シーズンよりさらに高度化した4回転ジャンプ争いが繰り広げられ、羽生結弦の負傷という惨事を招くほどに熾烈化した。そして、十代の天才少女たちが牽引する女子シングルの闘いも負けず劣らず熾烈である。

フィギュアスケートを観戦するにつけ、ティーンエイジャーの少女スケーターたちのメンタルの強さに驚かされてきた。メンタルに関して言えば、年長の選手たちや男子選手よりも彼女たちの方が余ほど強いのでは?と感じることもある。 そしてこのオリンピックシーズン、少女たちの強さをさらに鮮烈に目の当たりにすることとなった。

経験を積んで学習を重ねて獲得する強さもあれば、無垢であるが故の強さというものもある。パターン化された知識より、初めてのことにも対応できる柔軟性方が力になる場合もある。そして、若い心身から炸裂するパワーと煌めきが理屈不要の自信を生み出す。

オリンピック開幕間近の今、十代のフィギュアスケート女子シングル選手を取り上げ、彼女たちの強さの本質に迫りつつ、オリンピックに向けてのエールを贈ることにしたい。

公益財団法人日本スケート連盟 フィギュアスケート

ワールド・フィギュアスケート 81 – 2018/2/2 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2016.11.27

羽生結弦くん、GPF2016出場決定おめでとう!

2016_skate_canada_international_d_2今や自他共に認める絶対王者。
その高みに到達するずっと前から、私は君を応援していました。

NHK杯のレビューはあらためてアップすることにして、今日は わが愛の歴史、というか応援歴をマイブログの過去記事から辿ってみましょう。

フィギュアスケート熱が昂じて論文を始めてしまい、ブログも頓挫しておりましたが、ソルトレイク~ソチのオリンピックを中心に論ずるフィギュアスケート男子シングル にみるジェンダー・クロッシング」の結末に登場するのは、金メダリスト羽生結弦

ソチ冬季オリンピックまではほとんどスケオタブログ状態に。その中から、羽生結弦トピックの記事をピックアップしてみます。ソチ以後は、羽生結弦のシニア選手としての第2章。トップを走り続ける彼の煌きは眩しいばかりですが、第1章の彼も愛すべき存在だったこともずっと記憶に留めておきたいと思います。

氷上の挑戦者たち 2014/02/26

ソチ・オリンピック フィギュア・スケート男子シングルFS直前応援!  2014/02/14

第82回全日本フィギュアスケート選手権大会を終えて  2013/12/24

羽生結弦、18歳、壮絶なる責任感 (世界フィギュア2013)  2013/03/17

四大陸フィギュアを終えて   2013/02/17

2010年7月、新潟、羽生結弦15歳    2013/02/09

A Suggestion to Mr. Brian Orser  2013/01/10

フィギュアスケーター羽生結弦に捧ぐ妄想   2013/01/10

羽生結弦、熾烈な優勝争いに勝利! ノーミスながら無念の4回転サルコウ  2013/01/08

羽生結弦クンへ 蒼き時を過ぎても愛してる  2012/12/23

羽生結弦クンへ  まだあどけない君を愛してる  [開幕! GPシリーズ]  2012/10/24

Image: TomSzczerbowski/Getty Images North America (Oct.28, 2016)


新情報はこちら 
羽生結弦 特集     

ファンなら必読 羽生結弦の著書 

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2016.11.14

夏目漱石 『それから』の結末

「門野さん。僕は一寸職業を探して来る」と云うや否や、鳥打帽を被って、傘も指さずさずに日盛りの表へ飛び出した。(中略)
「焦る焦る」と歩きながら口の内で云った。
 飯田橋へ来て電車に乗った。電車は真直に走り出した。代助は車のなかで、
「ああ動く。世の中が動く」と傍の人に聞える様に云った。彼の頭は電車の速力を以て回転し出した。回転するに従って火の様に焙って来た。これで半日乗り続けたら焼き尽す事が出来るだろうと思った。
忽ち赤い郵便封筒が眼に付いた。するとその赤い色が忽ち代助の頭の中に飛び込んで、くるくると回転し始めた。(中略)仕舞には世の中が真赤になった。そうして、代助の頭を中心としてくるりくるりと焔の息を吹いて回転した。代助は自分の頭が焼け尽きるまで電車に乗って行こうと代助は決心した。
―夏目漱石 『それから』 新潮文庫、新潮社

Enlight1_2 夏目漱石の小説『それから』の結末。主人公・代助は裕福な家庭の次男で「高尚な教育」を受けたインテリ。三十歳になっても定職に就かずに親の援助を受け、世話をしてくれる書生までつけてもらい。何不自由なく暮らしている。生活苦とは無縁のランティエである。

 羨ましい限りの高踏遊民ぶりだが、決して幸福ではなく、アンニュイな日々を過ごしている。その理由の一つは過敏すぎる神経にあり、彼は八重椿が落ちた音も聞こえるほど研ぎ澄まされた感覚の持ち主なのである。そしてそれは「自分に特有なる細緻な思索力と、鋭敏な感応性に対して払う租税」、「天爵的に貴族となった報に受ける不文の刑罰」であるという。

 何とも傲慢だが、感覚過敏にお悩みの方や、繊細さゆえに社会での生きづらさを感じている方には使えるフレーズかも知れない。

 「皮膚には濃かな一種の光沢がある」という彼は、恐らくなかなかの美青年であり、ナルシストでもある。

 代助はこの傲慢さとナルシズムゆえに、社会に適応しづらい神経的脆弱さに劣等感を抱くこともなく、「これ等の犠牲そのものに、人生の意義をまともに認める場合さえある」と考えている。彼の傲慢は自衛でもある。

 さて、彼とは違い堅実に働き、しかし失業してしまった友人・平岡の妻・美千代への恋心を抱えながらもアクションに出ることはなくアンニュイな日々が続いていたが、冒頭に引用した結末のように、代助は自らそんな日々に終止符を打つことになる。

 職を探してくると言って家を飛び出し、電車に乗った彼の目に飛び込んでくるのは赤の色彩である。赤色は、行動に出ることを決意して一歩を踏み出した彼を挑発する。

 アクションは、友人の妻の掠奪。それによって社会的信用も、家族の援助も信頼も失うことは自明である。「仕舞には世の中が真赤になったという彼を止めることはもう誰にもできない。自己破壊へと突き進むのみである

 この小説には続編があり、そこで主人公と妻は決して幸福にはなっていないという。しかし、『それから』の結末の迫力はそれ自体に価値がある。アクションを起こすには、まず自己破壊を覚悟する必要がある。破滅のリスクが極めて高いとわかっていても、動き始めなければ何も始まらない。

 代助の頭の中が「電車の速力を以て回転し、東京の街の赤の色彩に鼓舞されたように、自分をアクションへと駆り立てる波がやって来たら、運命だと受け入れ乗り遅れないように乗ってみるのもいいだろう。アクションがなけれな何も始まらないのだから。

 社会に屈服し過度の理性に抑制されたままで一生を終るのもつまらないような気がしてきのか、ふと『それから』の結末が脳裏に浮かんだので書き留めておく。 

 

それから [DVD] 
原作:夏目漱石
監督:森田芳光 脚本:筒井ともみ
出演:松田優作, 藤谷美和子, 小林薫, 風間杜夫, 中村嘉葎雄
販売元:東映株式会社
1985年11月公開映画

 原作は既読の方も多いと思うので、映画のDVDをご紹介。主演の松田優作がアンニュイな味をよく出して(?)演じていた。哀愁に満ちた結末だったように記憶している。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2015.11.16

ジョニー・ウィアーらが追究した「クロスジェンダー・パフォーマンス」の意義とは?

フィギュアスケート男子シングルにみるジェンダー・クロッシング
―21世紀初頭のオリンピックにおけるパフォーマンスを中心に―


[論文要旨]本稿は、フィギュアスケート、男子シングルスケーティングにおけるクロスジェンダー・パフォーマンスをカルチュラル・スタディーズの視座で捉え、その重要性を提唱することを目的とする。20世紀のフィギュアスケート競技史を辿ると、自由な表現を阻む様々なイデオロギー・バイアスの抑圧下にあったことが明らかである。特に社会に規定するジェンダー・バイアス、そしてセクシュアリティ・バイアスの呪縛が影を落とし、ジュディス・バトラーが「ジェンダー・パフォーマンス」と定義した、異性愛至上主義の社会的ジェンダー規範を遂行するパフォーマンスがスケートリンクにおいても推敲されていた状況が続いていた。しかし、21世紀初頭にエフゲニー・プルシェンコジョニー・ウィアーらが追究した「クロスジェンダー・パフォーマンス」は、こうした状況に創造的破壊をもたらした。恰もバトラーが提唱する「ジェンダー・トラブル」が氷上で繰り広げられたような、彼らのクロスジェンダー・パフォーマンスを、四つのオリンピックを中心に辿り、その様相と意義について考察する。

全文(PDF)   日本大学大学院総合社会情報研究科紀要 第16号 2015年11月発行


Gender-Crossing in Men's Single Figure Stating
―Focused on the Performances in Olympics the Early 21st Century―

This study examines cross-gender performances in figure skating, focusing on men’s single skating. In the 20th century, figure skating performances were gendered in accordance with conventional heterosexual values. This is an example of what Judith Butler called gender–performative situations.
In the early 21st century, skaters such as Evgeni Plushenko and Johnny Weir are putting her “Gender Trouble” theory into practice through cross-gender performances.

http://atlantic2.gssc.nihon-u.ac.jp/journal/no16en/

 

※この論文に専念するため、ブログを中断していました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2015.11.14

フィギュアスケート男子シングル にみるジェンダー・クロッシング

大学院の紀要に論文が掲載されました。

フィギュアスケート男子シングル にみるジェンダー・クロッシング
―21世紀初頭のオリンピック におけるパフォーマンス から ―

Gender-Crossing in Men's Single Figure Stating
―Focused on the Performances in Olympics the Early 21st Century―

全文(PDF)   日本大学大学院総合社会情報研究科紀要 第16号 2015年11月発行

ぜひご覧ください。

 

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2015.08.14

祝!再開 フィギュアスケート・ブログ終了のお知らせ&フィギュアスケートのすすめ

自分がブロガーだったということを忘れるほど、自分がライターだったということを忘れるほど、多忙な日々を過ごしておりました。

フィギュアスケートをテーマに修士論文を書いて修了したのも束の間、紀要論文に取り組むことになり、しかもまだ完成していないので、まだまだ多忙な日々が続きます。

このブログ、読み返してみると我ながら面白いのですが、いつの間にかすっかりフィギュアスケート・ブログ。専門分野をもつのは悪くないのですが、やはり多趣味なカオス性を発揮(?)したくなってしまい、フィギュアスケート・ブログは終了にしたいと思います。

いえ、フィギュアスケートのことも語り続けていきたいのですが、もっと節操なく脳内のアウトプットに利用していきたいということです。本当にもう余命わずかなので書き急げ!時間がない!なのです。

その前に、フィギュアスケート鑑賞のおすすめ。
猛暑を乗り切るには、フィギュアスケート動画を見るのが一番です。
スケートリンクの氷を見るだけでも涼感を体感できるから。そして、エッジが着氷するときの音がたまらなくクールなのです。特に、美しくきまったトリプルアクセルの着氷の瞬間の爽快感。暑さも倦怠も吹っ飛んでしまいます。
4回転よりトリプルアクセル。私のような普通の動体視力の人でも美しさを堪能できるから。

それでは、イタリア旅行の準備で忙しいので今夜はこのあたりで。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2014.02.26

氷上の挑戦者たち Challengers on Ice

ソチ・オリンピック終了! 

挑戦者 浅田真央がファンに、スケーターたちにあたえた感動。
19歳の金メダリスト羽生結弦のあらたなる挑戦。
偉大なるチャンレンジャー魂は、アスリートたちをインスパイアし、継承される。

"皇帝"プルシェンコの挑戦も続く。
医学の力で身体の限界を超えた彼の挑戦は過酷にして残酷。

ファンとしては羽生クンにはその美しい身体を壊すほどの挑戦は薦めたくないけど、
君は君の道を行くのね・・・

・・・というのを書いたのですが、
連日の徹夜フィギュア観戦で体調を崩してしまったので、日本語版はしばらくお待ちください。
Challengers on Ice (1)
Challengers on Ice (2)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2014.02.23

Plushenko’s hands

Evgeni Viktorovich Plushenko, 2006 gold medalist, came back to Olympic game on February 6. He seemed to completely overcome physical pain, because he perfectly succeeded 4T+3T jump and other two high level jumps.

His SP skating was full of power and nobleness, and gave us something energetic. So, I believed his complete recovery as an athlete.

His FS programme “The best of Plushenko” was his own best collection like a gorgeous jewerly box and reminded us his many beautiful masterpieces. Though his spins were not so fast like the ones at his peak and changed some jumps to 3 to 2 rotation ones, he had never stepped out or fallen down, and not lost the dignity of “the emperor”.

All was energetic and beautiful in skating, but what impressed me the most was his “hands”. What are artistic and expressive hands! I know some motions are from early 20th century ballet dancer Niginski’s coleography. His hands were always much more beautiful than any other skaters, but in that programme they seemed to lead his skating. Some younger skaters might technically overwhelmed this 31-years-old skater, but no one’s had exceeded his hands.

“I have been prepared to be defeated”, Plushenko said to an interviewer in some magazine article. He was the second in the SP competition, but won the first place in FS and brought a gold medal in group figure skating competition. However, that was the last glory.

On February 13, Plushenko withdrew the single game just before his turn after the 6 minutes pre-skating. He couldn’t skate any more because of sudden pain in his back, and couldn’t be defeated any more.

Plushenko skated to the link, raised his both hands. Despite of severe pain, he is still noble and full of dignity. His hands were still powerful and seemed to promis his future recovery.

The only skater who defeated Plushenko in Sochi was Yuzuru Hanyu. He won a gold medal in men’s single figure skating.

Hanyu has been an enthsiastic Plushenko fan since childhood and dreamt to be a skater like him. Pulshenko’s passion and technique has been herited to this 19-years-old Japanese skater. He had already mastered bielman spin and 4 rotations jumps.

Plushenko announced the retire from his athlete career, but he hopes to restart his skating as a professional skater. I believe he will come back to link soon, as his hands surely promised us. Please come to Japan again. I will see you at arena!


| | Comments (0) | TrackBack (0)

2014.02.21

"挑戦者" 浅田真央へ贈る金メダル

 何という迫力! 何とも戦闘的なプログラム!
 2月21日未明、ソチ冬季オリンピック浅田真央は遂にトリプルアクセルを成功させ、FSで自己ベストを更新する演技を披露した。
 これをもって、彼女の到達点とみなしてよいだろう。極度の緊張感の中で繰り返される高度な技、技。そして、その合間も一瞬の途切れもなく一瞬の隙もなく美しい動き、美しい型、そして醸し出される美しい空気が連続し流れていく。

 ありがとう、浅田真央。このFSの演技を忘れることなく脳裏に記憶し、ことあるごとに再生することで、私たちも困難に打ち克って生きてゆけるような気がする。
 私から個人的に金メダルをお贈りします。
 
 オリンピックのメダルは逃したけど、世界中からたくさんの金メダルが世界中から貴女に届くでしょう。過酷すぎるオリンピックへの道。ハイリスクなトリプルアクセルへの挑戦。それを敢えて選んだ貴女、そして、成し遂げた貴女に感動!

 他にも言いたいことはたくさんあるけど、まずは取り急ぎ、ありがとう!
 
 


 
-----------------------------------------------------
 
※言うべきではないことはわかっているけど、一言だけ追加。
今回、自己ベストどころか史上最高得点?の出来だったのに意外に点数が上がらなかったのは、3F+3Loと2A+3Tの<( Under-rotated jump)判定、3Lzのe(Take-off edge not correct or clean)判定のため。いずれも、解説者がスローモーションで見ても判然としないレベル。厳しすぎる!!
FS採点表

 
 

 
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2014.02.20

二つの耽美な展覧会 ~ラファエル前派から唯美主義へ~

Poster_2 2014年冬、東京では二つのいとも美しい展覧会が開催されている。美しいものがお好きな方には、二つ続けてご覧になることをお勧めする。

 午前中に森アーツセンターギャラリーで「ラファエル前派展」を堪能し、六本木ヒルズでこの展覧会がテーマのランチを愉しみ、午後は三井一号館で「英国の唯美主義展」をじっくり鑑賞というコースで至福の時間を過ごしてみてはいかが? 同じ日に二つは無理という場合は、まずは「ラファエル前派展」の方へ。アヴァンギャルドであるラファエル前派の芸術活動が原動力となって、唯美主義が生まれたというのがこの二つの国際巡回展の美術史解釈。この時系列の順序で観ることで、世紀末芸術の誕生から成長、爛熟、頽廃のドラマをよりリアルに体験することができる。

「テート美術館の至宝 ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝絵画の夢」
森アーツセンターギャラリー(東京・六本木)
2014年1月25日~4月6日

「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900」
三菱一号館美術館
2014年1月30日~5月6日

 「ラファエル前派展」のレヴュはこちら。単なる懐古主義者ではなく、偉大なる先駆者、ラディカルなアヴァンギャルドだった彼らの功績をあらためて知り、独特の美の世界を堪能することができる。

 「英国の唯美主義展」のレヴュは後日あらためて。
 「ラファエル前派展」と登場人物が重なるのが面白く、「ラファエル前派」の擁護者だったラスキンが唯美主義画家ホイッスラーの敵となり批判したなど、意外なエピソードも知ることになる。絵画だけでなく、建築や家具、工芸作品など、唯美主義が生活にも浸透していたヴィクトリア朝後期の雰囲気に浸ることができる。

 

※冬季オリンピックが終わってからでいいです。まずは、女子フィギュアシングルを応援! 浅田選手、最後までがんばって!!(メダルをもういいから、貴女のベストを見せて) 羽生選手のエキシビションもお楽しみに。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2014.02.15

プルシェンコの手

 2014年2月6日、フィギュア・スケート界の「皇帝」と呼ばれた男、エフゲニー・プルシェンコがオリンピックの舞台に復帰した。怪我等で体調が危ぶまれていたが、団体戦の男子シングル演技では素晴らしい演技を見せ、復活を印象づけた。

 ほぼ4年ぶりにTVで見るプルシェンコの演技は重厚な迫力と気品に溢れ、完全なる復活を遂げたかのように思われた。特に、FSの「ベスト・オブ・プルシェンコ」は、長年トップレベルで滑り続けてきた彼だけができる宝石箱のようなプログラムだった。

 4回転もコンビネーションも確実に、トリプルアクセルは誰よりも美しく、そして、決して転ばずにジャンプを決めるプルシェンコ。最盛期のような超高速スピンやビールマンスピンは見られなかったが、一種官能的な魅力も王者の風格も決して失ってはいなかった。

魅せどころ満載のプルシェンコの演技だったが、何故だか一番印象に残ったのは、その「手」だった。何という表現力豊かな、手。「ベスト・オブ・プルシェンコ」の「ニジンスキーに捧ぐ」シーンでの独特の動き。強い意思ももって回転や跳躍をリードするような力強さ。皇帝不在の4年間に他の選手が驚くべき成長を遂げ、技術面で彼を超えるような選手も育ってきているようだが、この「手」を超える者はまだいない。

 「負ける覚悟はできている」と、或る雑誌のインタビューで語っていたプルシェンコ。団体戦SPでは羽生結弦に次いで2位となったが、FSでは堂々1位に輝き、ロシアチームは団体戦で金メダルを獲得した。しかし、それが最後の栄光だった。

 2014年2月13日、エフゲニー・プルシェンコ選手は、男子シングルSPを演技直前に棄権し、その後の会見で引退を表明した。リンクに進み出て、両手を上げ観客に向けて振って見せたプルシェンコ。その手もやはり感動的だった。復活を確信させた団体戦FSの演技だったが、傷めていた腰にダメージをきたし、練習もできないような状態に陥っていたという。ジャンプの練習もできないままFSの直前練習に臨んだが、腰にナイフで刺されたような激痛を覚え競技不能を判断した。これまでも何度も負傷し、外科手術と努力によって復活を遂げてきたプルシェンコだったが、そのアスリートとしての限界は、自国ロシアのオリンピックのリンクで訪れた。「負ける覚悟はできている」と語った彼だったが、もはや負けることさえできない状態だった。

 しかし、それほどの痛みを抱えながら、リンクに滑り出て両手を上げたプルシェンコの立姿は、最後まで堂々としていた。そして、その手から、オリンピックや競技の場から退場しても、フィギュア・スケーター、エフゲニー。プルシェンコは必ずリンクに戻ってくるという強い意思が伝わってくるかのようだった。思えば、故障した状態ながら、団体戦でファンを失望させない滑りを全うできたのも、いつもよりも雄弁だったあの手の力だったのかもしれない。

 皇帝プルシェンコがこの最後のオリンピックでただ一人負けた相手は、羽生結弦。シングルSPで100点を超える史上最高得点をマークし、金メダルを勝ち取った最強の選手である。負ける相手として不足はない。幼い頃からプルシェンコに憧れて精進を続け、ついに頂点に昇りつめた羽生。プルシェンコ一人しかできなかったビールマンスピンをマスターし、プログラムにも取り入れていたという。4回転ジャンプの成功率もプルシェンコに追いついてきている。こうして、アスリートとしての技と情熱は次代の若者に継承されていく。

 競技会からの引退を表明したプルシェンコだが、彼のスケート人生はまだ終わりではない。彼自身が語る前に彼の手が誓ったように、皇帝は必ずリンクに復活し、プロスケーターとしてファンを魅了し続けてくれるだろう。日本のアイスショーで滑るときは、私もぜひアリーナ席から声援を送りたい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Still seeking Ice Queen like Johnny Weir

I can’t find a male figure skater like Johnny Weir in Sochi Olympic. I still expect to see delicacy and elegance in Yuzuru Hanyu or Daisuke Takahashi’s FS presentation, but I know they are not type like Johnny and they had achieved and established their own world. Of course I know every skater is unique and nobody can be like Johnny Weir and have to be so. However, I miss his gorgeous and beautiful skating, and his absence make me sad, despite Johnny himself may not be so sad and rather enjoying the Olympic as a commentator.

Now, seeing men’s freestyle figure skating on TV, I am still seeking Queen, but in vain. Some people say Jason Brown, an American skater, is similar to Johnny. They say that this ponytail 19-years-old boy may have some girlish sensibility like Johnny. Although he is not so gorgeous to be called as Queen yet, I am warmly cheering for him because I like his charming skating.

As Johnny wrote “What’s wrong with being unique?”, the uniqueness is the most important thing for us, and so for skaters. However, I am still seeking Ice Queen on men’s figure skating link. Please stop my silly challenge and stop my writing right now! Yuzuru Hanyu will be on the link soon and win a medal.

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2014.02.14

ソチ・オリンピック フィギュア・スケート男子シングルFS直前応援!

あと20分で4年間、待ちに待った勝負が開始。
直前すぎるけど、直接入力で熱烈応援!

ハプニング続きのSP。
プルシェンコ選手、最後までときめかせてくれてありがとう!
団体戦で華麗なる復活の演技を見ることができて感動です。

羽生結弦選手、金メダルは君のもの!
揺るぎない安定感。既に王者の風格。
SPとは違う君の感性を表現できるFSの演技にも期待。
ジュリエットでもあるロミオ。
繊細な君の煌めきを見せて!
そして、今こそ完全に君のものになったリンクを楽しんで!

高橋大輔選手、今回のプログラムは最高!
ようやくたどり着いた貴方の世界で、存分に滑って。
全てをさらけ出せばいい。
貴方の世界は誰よりも美しいのだから。

町田樹
選手、火の鳥のコス、団体戦では露出度低いのに変えてたけど、
個人戦では露出タイプに戻したのね。エライ!
初めてのオリンピック、緊張するかも知れないけど、
FSの選曲は正解!
ロシアは君に微笑んでいる。

心身ともにズタズタになるまで切磋琢磨してきた日本選手たち。
切磋琢磨って、痛いからしなくてもいいんじゃない?
削らなくても磨かれればいいんじゃない? なんて思ってきたけど、
オリンピックの舞台で君たちの輝きを目の当たりにして
やっぱり、共に競い合い高め合って獲得した力って強いのねと実感。

みんな、がんばれ!!

ジェイソン・ブラウン選手も頑張って!



| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.12.24

第82回全日本フィギュアスケート選手権大会を終えて

 毎年、熾烈すぎる全日本フィギュアスケート選手権大会。世界選手権やオリンピックにベストコンディションで臨めるように、シーズンのピークがここに来てしまうのは避けられないものかと毎年思うが、いたしかたないのかもしれない。何しろ、ジュニアも含めて上位陣は世界最高レベルの日本選手たち。激戦化は避けられない。

 今年の大会はオリンピック代表権がかかっているだけに、例年に増して熾烈を極めた。一人一人のドラマもあり、なかなか感動的だった。テレビで観られる限りの演技を観て、インタビューも聞いてわかったことは、一人一人が崇高なアスリート魂をもっているということ。決してクールでもスマートでもなく、むしろ青臭く泥臭くもあるアスリートの精神。最後の決断において、彼らは勝算よりも挑戦を選ぶ

 FSの演技において、満身創痍の身でありながら2回の4回転ジャンプを回避しなかった高橋大輔、2回のトリプルアクセルに挑んだ浅田真央、SPとは違うコンビネーションジャンプを敢えて入れようとした安藤美姫。彼らのハイリスクな挑戦は失敗に終わり、点数を下げ順位を下げる結果となった。彼らは失敗を悔やみ涙しながらも、自分らしくありたかったと語る。挑戦を回避して自分に負けるくらいなら、他人に負けることは厭わないという潔さ。誇り高きアスリート魂に拍手!

 激烈な闘いもひとまず終結し、オリンピック代表選手も決定。今回も盛り上がりすぎてオリンピックまで大丈夫? なんて心配は無用だろう。結局、高橋大輔も無事代表入りし、色々な面でベストメンバー勢揃い。特に、男女シングルはオリンピック終了後も活躍し牽引できる若手も入っているのが心強い。ここに辿り着くまで、一人一人の4年間のドラマがあっただけに、ファンとしても感慨深いものがある。以下、皆さんへのメッセージ(お姉さんなので「クン」や「ちゃん」で呼ぶけどお許しを)。

 高橋成美ちゃん、トラン君と築き上げた実績がゼロになっちゃったけど、新しいパートナー君が見つかってよかったね。団体戦でがんばってね!

 リード兄妹、今回も和物プログラムを用意してくれてありがとう! 

 村上佳奈子ちゃん、目指していた大人の境地に到達できたね! ロシア大会でのあのあり得ない音源ミス(ワザとの意地悪?)を乗り越えて復活できてよかったね!

 町田樹クン、今年の成長ぶりは凄いね! 初めてのオリンピック、体当たりで頑張ってきてね。

 鈴木明子さん、全日本選手権優勝おめでとう! ノーミスの演技、最高でした。トリプルアクセルの真央ちゃんに注目が集まる中、自分の世界を確立して技術的にもレベルアップしてきた貴女、オリンピックでのメダルも夢じゃないはず。

 浅田真央ちゃん、バンクーバーからの4年間、一度も休むことなく継続してきた努力が実ってよかったね。不調からの3年を費やしての復活劇は感動的だったよ。ソチでは、トリプルアクセル成功させてね。

 高橋大輔クン、3回目のオリンピック出場決定おめでとう! キミがいなけりゃ始まらない。つい熱くなってこんなに書いちゃったけど、必要なかったね。今回は、本当のキミ自身の深いところを表現できるプログラム? 存分に楽しんで滑ってきてね。

 選外の小塚崇彦クンにも。全日本でキミの復活も確信できてよかった! オリンピック1回休みでも、キミなら大丈夫。ソチの次を目指してがんばってね!

 選外の安藤美姫さん、ブランクを乗り越えて全日本選手権の舞台に戻って来て、ファイナリストになったことが貴女の金メダル。勇気ある挑戦に世界中から拍手が聞こえるはず。

 そしてそして、色々見届けてクールダウンしたところで、今回最も偉大だったのは、自己ベストどころか世界最高得点更新の羽生結弦クン。19歳にしてパトリック・チャンをも超えるレベルに到達した君。余裕さえ感じさせる安定感に、今回危ない場面もあった人よりずっとスマートに見えてしまうけど、奇跡のような君の成長は試練を経て勝ち取ったもの。2011年の東日本大震災では自宅全壊、練習中の被災、ホームリンクの喪失といったカタストロフを乗り越えての勝利。誰よりも凄まじい闘いに打ち勝っての成果だったことを私は知っている。ずっとずっと応援してきたから。

 今回のFSで見せたイナバウアーはダイナミックで圧巻だった。プルシェンコと君にしかビールマンスピンは今回も健在。成功率が上がった4回転ジャンプにも挑み続けてほしいけど、トリプルアクセルの着氷の美しさも君の魅力ということを忘れないで。クールな『パリの散歩道』も素敵だけど、ジュリエットの一面も見える『ロミオとジュリエット』もいい。誰に何と言われても、君の感性、君の個性、君の美しさを貫いてね。念のため言っておくけど、オリンピックで金メダルを獲得したとしても引退なんてしないでね。まだまだ成長する君を見ていたいから。

 最後にもう一度、みなさんおめでとう! ありがとう! そして、メリー・クリスマス!

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.12.23

ソチ・オリンピックには高橋大輔を!

Ice1 フィギュアスケート男子シングルソチ・オリンピック代表はもう決定しているのかもしれない。あとは発表を待つのみでこんなところで発信しても何のクスリにもならないのだが、私はやっぱり高橋大輔選手に行って欲しいと思う。私が主観的に思うというだけなので何の説得力もないことは心得ている。

  勝負は時の運で、運も才能の一つ。高橋大輔が最悪のタイミングでコンディションを崩し、全日本選手権で5位に終わったのは本人の自己責任。というのも一理あるし、スポーツというのはそういうものだろう。

 高橋が全日本選手権以前に他の条件を既に満たしていることを考慮して、代表選考はフェアになされることだろう。今回彼が選抜されなかたら、全日本選手権に重点を置きすぎた選考基準、柔軟性の欠如が招いた悲劇ともいえるが、スポーツというのはそういうものなのだと割り切るしかないのだろう。

 以上のようなことは十分に心得ているが、決定までの数時間に何か書かずにはいられない。やはり私は、オリンピックで高橋を見たいし、彼の選手としてのキャリアはオリンピックで終わらせてあげたいと切に願っている。

 高橋大輔は日本のフィギュアスケート男子シングルの黄金時代を築き上げるうえで事実上、中心となった選手であり、様々なプログラムに挑戦し、達成してきた。ロックやラテンのリズムの曲で、踊り手としての才を発揮しファンの期待に十分に応えてきた。バンクーバー・オリンピック以来のテーマだった「道化師」も昨シーズンのオペラ曲で完成させた。しかし、まだ出しきってないものもある。バンクーバー以後のエキシビションで見せてきた、ピュアな繊細にあふれるプログラム。競技会では敢えて封印してきたのかも知れないが、ソチ・オリンピックを照準に、SP、FSとも、本来の彼の感性で滑れるものをやっと表に出してきた。そして、恐らくグランプリNHK杯でようやく完成の域に達した。

 今回の彼に渾身のプログラムをぜひオリンピックでもう一度見せて欲しい。そう願うのはファンの主観でしかないが、やはり書かずにはいられない。全日本選手権FSの評点を見ると、芸術点では羽生選手を超える最上位。十分に評価はされている。技術点は客観評価なので、オリンピック出場権がかかっている今回のような場合は、勝ち取るための計算高い作戦も必要だっただろう。しかし、彼のアスリート魂はそれを許さなかった。そして、競技中の負傷。血染めの手。満身創痍の壮絶感、涙のインタビュー。どんな結果になっても彼は結果を受け入れるだろうが、ファンの胸にはやり切れなさが残るだろう。

 高橋を悲劇のヒーローとして終わらせたくないし、彼の真骨頂となる演技をオリンピックで見たいというのが一ファンとしての主観的な願いだが、もし、代表に選ばれたら、今度こそは万全のコンディションを取り戻すように頑張ってほしい。今回の無理で悪化していようものなら、日本スケート連盟は責任をもって治療プロジェクトを結成し全快させてほしい。

 ところで、私はいつから高橋クンのファンになったのか? あんなに羽生クン贔屓だったのに。

高橋大輔の新たなる挑戦、ヴェリズモ・オペラ「道化師」を熱演!
 
 
  


| | Comments (0) | TrackBack (0)

氷上の満身創痍

Ice2 満身創痍のアスリートの迫力に弱いのは私だけかも知れないが、特にフィギュアスケート選手の美しさを微塵も崩さない満身創痍ほど壮絶なものはない。

 昨シーズンの世界選手権の羽生結弦選手もまさに、インフルエンザ病み上がりの身に怪我も抱えての満身創痍だった。過酷な状況から奮起して男子シングルの出場枠3枠を勝ち取ってくれた。技術点でパトリック・チャンを上回る出来栄えは感動ものだった。そのとき彼自身も色々なものを勝ち取り、成長できたのだろう。今年の彼の成長ぶりには目を見張るものがある。オリンピック出場決定おめでとう!
羽生結弦、18歳、壮絶なる責任感 (世界フィギュア2013)

 そして、今年の全日本フィギュアスケート選手権では、オリンピック最有力候補の一人だった高橋大輔選手がまさかの満身創痍。11月末に負傷した右脚が完治しないままに出場。そして、演技中にスケート靴のエッジで手に切り傷い、血まみれの手のまま演技。4回転ジャンプに挑戦するも2回とも失敗。

 しかし、立ち直って演技続行。後半のジャンプも決め、彼がアピールしてきた方向性とは違うものの、彼が本来もっている繊細な表現力を発揮して、ファンを魅了した。血に塗れた手が痛々しく、ビートルズメドレーが切なく聞こえた。

 結果は、5位。完全無欠の羽生選手と絶好調の町田選手の1位、2位は予想がついていたものとはいえ、今回急に調子を取り戻した小塚選手やFSで挽回した小田選手に及ばなかった。私が魅力を感じる一種クネクネ感のある繊細さは、「演技にキレがなかった」と評価されてしまうらしい。

 全日本フィギュアで5位では、出場が微妙になるらしいが、日本のフィギュアスケート男子シングルを牽引してきた高橋選手がアスリートを終える場はオリンピックであってほしいと切に願う。世界ランキングとグランプリシリーズでの実績から、十分に資格はあるはずだ。ここで高橋選手を落としたら、世界中の非難を浴びることになるだろう。

 最後に、フジテレビに苦言。あのタイミングで高橋選手にインタビューするのは酷だったのでは? 

 
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

キミたちの第2章は?

Tree ADHDでもあるキミたちへ。

 キミたちの第1章の物語は、少しだけ知ってる。ママが勝手にホームページを立ち上げてアップしたり、掲示板の相談コーナーで暴露したりしてたから。でも、この子はもう大丈夫! と確信したとき、キミのママはホームページを閉じたし、掲示板の書き込みもやめた。めでたしめでたし、ハッピーエンド! と、キミのママやパパや先生たちは思ったかもしれない。

 でも、私は知ってる。キミの第1章は終わったけど、キミはキミの第2章を歩き出してるんだよね。克服できたこともあるだろうけど、キミの試練はまだ続いている。キミの苦しみもまだ続いてる。そして、それは前より孤独な闘いだけど、一人でがんばってるキミ。

 誰にも言わなくてもいいけど、私は知ってるから。わかってくれる人もいるから。つらくなったら、誰かに頼ってもいい。泣いてもいい。

 そんなキミをかっこいいと思うから、胸を張って生きていけばいい。しくじってもいい。正しいと信じたら、行動してみればいい。キミの直観が正しければ、誰かが着いてくる。もし、間違っていたら、誰かが止めてくれる。キミの勇気が必要だから、キミはそんなふうに生まれてきた。キミたちがいなければ、きっと何も始まらない。

 ちょっと早いけど、メリー・クリスマス!


  

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.07.03

祝! 安藤美姫選手復帰。

Pinkroses 美姫ちゃん、復帰おめでとう!

 美姫ちゃんの赤ちゃんのパパへ:
 美姫ちゃんがオリンピックに向けてもっとがんばれるように、育児をして下さい。

 ※寝不足になると明日の私のパフォーマンスに差し支えるので、要点のみ。


 
 
 
 

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.06.16

映画レビュー 『死ぬまでにしたい10のこと』

My_life_without_me_2死ぬまでにしたい10のこと(My Life Without Me)
スペイン、カナダ映画 2002年

 突然余命2~3か月を宣告された23歳のアン。家族には本当の病名や死期を告げず、一人で死に向き合うことを決意。そして、「死ぬまでにしたい10のこと」リストを一つずつ叶えていく……。

 いかにもお涙頂戴のストーリーなので、泣く人もいることだろうが、私は泣かなかった。重いテーマを扱いながら、各場面の淡い色彩感、親しみやすい音楽等で、全体として軽やかな印象の映画としてみることができる。何より、ヒロインのアン(サラ・ポーリー)が色彩に例えればパステルカラーの、繊細な少女の面影を残す女性であり、語り口も一貫して淡々とさりげないので、この種のテーマ、しかも不倫エピソードも含まれるドラマにありがちのドロドロ感は感じられない。

 17歳で妊娠、夫は失業中、トレーラー暮らし、父親は刑務所に服役中、職業は重労働の夜間掃除婦という、社会の底辺ともいえる境遇ながら、夫と二人の娘に愛されている幸せを噛みしめながら懸命に生きるアン。余命2~3か月を宣告されているので、仕事は早い。遺書を書くのではなく、肉声を録音して家族や愛人へのメッセージを遺している。夫以外の人との恋愛、ママ候補確保という実現可能性が低そうな命題も、偶然の出逢いを逃さず関係を結び、実現している。

 原題の” My Life Without Me”については色々と考えさせられる。私のいない私の人生?いや私の命か? 死後も大切な人たちに記憶されることで生かされる自分の命。自分が生きた証。先に死ぬことで悲しませることは避けられないが、それはきっと彼らを幸福にする……。

 この映画のレビューをいくつか読んでみると、10のリストの中に不倫が含まれていることに共感できるかどうかで評価が分かれるようだが、私は映画全体の淡々として繊細なパステル調のタッチを堪能しながら楽しむことができた。不倫の問題はさておき、共感することしきりの映画だった。23歳で末期癌、余命2か月というヒロインの運命は何とも映画的で非現実的なようにも思えるが、案外そうでもないかも知れないから。 実際、突然不治の病が発症することや、不慮の事故で命を落とすことがないとも限らない。

 「死ぬまでにしたいこと」は、余命を宣告されていなくても、作っておいたほうがいいだろう。そして、それを叶えるために努力することで毎日が生き生きとしてくれるだろう。出逢いを逃さず生かせるようにもなるかもしれない。

 今年の人間ドックの結果にD2がつけられた私も、このリストをつくることに決めた。余命宣告はまだなので10より多くしても大丈夫だと思っている。アンのように、家族のためのことも入れることにするが、とりあえず「オペラの舞台に立つ」という項目を入れることにした。死ぬまでに歌いたい役は数えきれないし、全部は実現不可能だけど、まずは端役から。『リゴレット』のチェプラーノ伯爵夫人なんていいかもしれない。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.03.19

美少年写真ノススメ

Irina 「美少年」という言葉に弱くて、「美少年」関連の情報があれば、どこへでも飛んでゆく――。というほどでもないけれど、「ロシアの美少年 イリーナ・マイコフスカヤ写真展」なるエキシビションがあると知り、近くでもないし、何のついでもないけれど、行ってまいりました。

昨日で終わってしまったので、宣伝にならなくてすみません、イリーナ・マイコフスカヤさん(ロシア人には見えないけど綺麗なお姉さん)。センスのいいモノクロの写真、楽しませていただきましたよ。

でも、点数が少なかったのが、ちょっと残念。ギャラリーが狭いから仕方なかったのでしょうね。もし、愛蔵の美少年写真をもっとたくさんお持ちなら、ぜひまた個展を開いてくださいな。

「美少年」というだけで(電車で)飛んで行った私にとって、点数少なすぎの「美少年」写真展というのはやっぱり何とも物足りないもので、フラストレーション――ではなくて、美少年愛が爆発。美少年の写真をもっと見たい! 彼らの一瞬一瞬の煌めきを映した写真をもっと見たい! まずは、iPhoneの画像共有アプリInstagramで「#美少年」「#beautifulboy」を検索。ところが、ナルシスト青年の自画自賛セミヌードとか、私好みでないものが多過ぎて、満たされない感が募るばかり。

というわけで、本日の本題、美少年写真ノススメ。
美少年の母/父の皆さま、お子様の写真を撮りましょう! スマートフォンやデジカメで簡単に撮れるでしょう? 一刻、一刻を急成長中、1秒たりとも同じではいられない――。今なら全ての瞬間が親のもの。一瞬一瞬がシャッターチャンス。逃す手はありません。美しい思い出の写真は何枚あってもいいでしょう? 

そして、Instagramにアップして下さい。Autisiaをフォローしてください。私が見られるように。私もがんばってアップしますから。ご縁があったら、ご一緒に大美少年写真展でもやりましょうか?  その頃にはもう、当の美少年は青年に進化しているかもしれませんが。

 
 
 


| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.03.17

羽生結弦、18歳、壮絶なる責任感 (世界フィギュア2013)

 羽生結弦クン18歳の頑張りのおかげで、男子シングル日本勢、ソチ・オリンピックに3枠獲得。おめでとう!

 大会前にインフルエンザ、左膝故障、直前練習で右足首負傷という最悪のコンディションで、FS3位、技術点では1位という好成績をおさめ、表彰台は逃したものの、SP9位から総合4位まで浮上。不安と不調を抱えながらも精神力で勝利した君に拍手!

 でも、頑張りすぎじゃないかなと心配。腱を痛めているという左膝は大丈夫? シーズン終了したからゆっくり休んでね。

 今日の「ノートルダム・ド・パリ」、最高だったよ! 君が満身創痍だからというわけではなく、自然に感情移入できる素晴らしい演技だった。このミュージカルの主人公は王子ではなくて、捨て子だった醜い鐘つき男。しかし、誰よりも純粋で美しい心をもった人物。その精神の煌めきと苦悩、悲劇性を全体で表現しているのが今シーズンの君のFS? あのシットスピンは僵僂の主人公をあらわしているのかな?

 不調と負傷を抱えながら、君は何一つ手を抜かなかった。気も抜かなかった。ミスもしなかった。加えたから加点がつくというわけでもないビールマンスピンもいつものように決めて、ファンの期待を裏切らなかった。

 滑り終えて、君はリンクに倒れ込んだ。そして、コーチに迎えられると、嗚咽を抑えながら、泣いてたね。滑りきれた、責任を果たせたという感動、安心感から? 

 おめでとうは真っ先に羽生クンへ。

 そして、高橋クン、無良クン、日本男子シングルの皆さんにも、おめでとう。

 単純に喜べばいいのだけど、二言三言、苦言を言わせていただくとしたら――。

 日本に3枠を! の「責任」を羽生クン一人に背負わせないでね。高橋クン、無良クンにも言いたいことは沢山あるけど、日本スケート連盟フィギュア委員の皆さんへ――。

 一人一人、大切な選手なのだから、万全の調整ができるように、もっと配慮してあげてください。四大陸と世界フィギュアに同じメンバーを出場させなくてもいいのでは? シーズン終盤で疲れも出ている時期に酷使しないで。何らかの配慮があれば、羽生クンの大会前負傷は防げたかも。せっかく層の厚い選手が育っているのだから、何とかできるのでは?

 日本スケート連盟フィギュア委員長さんのコメントに、「切磋琢磨」という四字熟語が出てくるけど、もう十分切磋琢磨しているから、摩耗しないように配慮が必要なのでは?

 以上、言いたいことは大体言ってしまったので、あとはよろしく。

 羽生クンにもう一言。ソチまで、しっかり調整してね。アイスショーも楽しみにしてるけど、自分の調整を優先させてね。もう責任は果たせたから、後は自分が代表の座を勝ち取ることに専念してね!

 
 
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.03.15

ごめんね、パトリック・チャン

 すっかり、フィギュアスケート・ミーハー・ブログになってしまったこのブログ。他に話題がないわけでもないが、やはり世界フィギュア2013が開幕したからには、何か書かずにはいられない。

 男子ショートはパトリック・チャンが首位。羽生結弦の世界最高得点を更新。文句なしの出来だから文句は言えない。実は私は彼のスケートはあまり好きではない。それは単に私の好みではないというだけで、今日の彼の完璧さは得点が示す通りであっぱれと言うしかない。

 人並み外れた身体能力に恵まれ、順調にトップレベルのスケーターへの道を歩んだように見える彼だが、人知れない苦労もあったことだろう。その一つをほとんどの人が忘れたことだろうが、私は覚えている。

 バンクーバー・オリンピックで5位という成績を収めた彼は、エキシビションにも出演した。そのとき、私たちジョニー・ウィアー・ファンは言ったのだった。6位のジョニーの方が良かったのに、パトリック・チャンが5位とはひどい。地元加算にちがいない――。有名スケーターから抗議もあったらしい。あのとき、私たちはオリンピックのエキシビションでジョニーを見られないのが残念で、署名運動に加わるほど必死だったのだが、明確な判定ミスを指摘できない限り、スポーツの世界で勝負のついた競技にとやかく言うべきではなかった。

 パトリック・チャン本人のこの件に関するコメントは聞こえてこなかったし、興味もなかったのだが、勝ち取った順位にケチをつけられたのだから、内心傷ついたかもしれない。と、今になって思う。あるいは、このときのジョニー・ウィアー・ファンたちが発した不愉快な声が彼を奮起させたのかもしれない。

 彼が高度な技術点を獲得してトップに躍り出たのは、バンクーバー・オリンピックの直後だった。その後の躍進、成長ぶりは今回のSP最高得点が示す通りである。

 ジョニーへの愛は変わらないが、この件を一度総括しておかなければ――と思った。

 というわけで、ごめんね、パトリック・チャン。
 FSで、高橋大輔クンとのオペラ対決、盛り上げてね。

 私が応援するのは羽生クンだけどね。

  
  
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.02.17

四大陸フィギュアを終えて

 全日本選手権のほとぼりが冷めないうちに、四大陸フィギュアが開幕。いや、あれからもう1か月以上経過しているので、選手たちは切り替えも調整も完璧なはず。

 ところが、高橋クン、まさかの7位。羽生クン、逆転されて2位。優勝したケビン・レイノルズ君はSP 6位からの逆転という文句なしの出来。無良クン、ジャンプの失敗もあり8位。はっきり言って残念な結果。
 
 全日本選手権が熾烈すぎて、切り替えと調整が十分でなかった? あのときほどの緊張感、気迫が感じられなかったのは確か。今や世界最高レベルの男子シングルを勝ち抜いて代表の座を得るには、あの闘い、あの試練に勝ち抜かなければならなかった。しかし、史上最高得点を更新しても「参考記録」にしかならない国内大会をシーズン中最高潮のクライマックスにしてしまうのはもったいない。

 その点、今シーズンの女子シングルは、全日本選手権で今一つ盛り上がらなかった。3回転+3回転を成功させたのがジュニアの選手だけという物足りない内容。しかし、あれはあれで結果的によかったのだろう。選手自身もあれでは出し惜しみしすぎとわかっている上で四大陸に臨み、浅田真央はトリプルアクセスも、3回転+3回転も復活。鈴木も村上も3回転+3回転を成功。文句なしの内容でメダル独占。

 フィギュアに限らず、期間の長い取り組みには、全体の流れとバランスを考えて、どこにクライマックスを置くべきかを考えておいたほうがいい――そんな教訓を得られた四大陸フィギュアでした。

 ところで、四大陸フィギュアの結果が残念だったとしても、もちろん絶望しなくても大丈夫。四大陸フィギュアをクライマックスにもっていくのも不正解。世界選手権のほうでぜひがんばってもらわなければ! ヨーロッパ勢もロシア勢も勢揃いの世界大会でぜひ、最高の演技をみせてほしい。そして、来年のオリンピックを4年間最大のクライマックスになるように調整してね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.02.09

2010年7月、新潟、羽生結弦15歳

 2010年7月10日、ファンタジー・オン・アイス2010昼の部。新潟朱鷺メッセで開催されたこのアイスショーが、羽生結弦転機だった。と、私は思いたい。何故なら私もその場に居合わせたから。

 エフゲニー・プルシェンコジョニー・ウィアー、荒川静香。羽生結弦は、尊敬するスケーターとして名前を挙げている彼らと、このアイスショーで共演した。このときが初めての共演だったのかは確認していないが、前シーズン、ジュニアの大会で1位を独占して波に乗っていた彼が素晴らしい滑りを見せ、プルシェンコとジョニー・ウィアーにその才能を印象づけたのはこのときだったはずだ。

 尊敬する相手と共演し、自分のスケートを認められ、心を通い合わせることができたファンタジー・オン・アイス2010は、羽生結弦の成長において大きなステップだったのではないだろうか? その後、シニアデビューした彼の急成長ぶりは見ての通りなのだから。

 実はあの頃、私はジョニー・ウィアー一筋の萌ファンで、羽生クンにはそれほど注目していなかった。ジョニーの系統の素敵な色気のある美少年が出てきたなと思ったが、ただただジョニーに歓声をあげていた。

 ジョニーはと言えば、このとき一目で「ユヅ」の才能を見抜いたらしく、Twitterで絶賛していたし、次のシーズンには彼の衣装をデザインしている。

 2010年7月、新潟朱鷺メッセ、羽生結弦15歳。今は世界のトップに立つ彼の、転機となったあの至福の瞬間に居合わせた幸運に感謝する。


 羽生クン、四大陸選手権、フリーもがんばってね!

 
 
  
  

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.01.25

短編小説『ゲコ・バール』 もくじ

短編小説『ゲコ・バール』(長編小説『アカデミアン・ラヴァ―ズ』外伝)

Image2050年、自治都市アカデミア。世界中のエリートが集まる大学都市。
芸術学部ヴァイオリン学科のマキ,シオンは未処置のFTMゲイ。しなやかな細身と美貌のため、男装してもボーイッシュな女の子にしか見られないのが悩みの種。勘違いされて男に惚れられて棄てられるという悲恋の連続に苦悶の日々を過ごしている。
ある日、失恋した相手に遭遇したうえコンクールに落選し、その直後に親友の自殺未遂を知るという不幸が重なる。極度の抑制のため慟哭することもできず、下戸ゆえに酒で憂さを晴らすこともできない。狂暴な悲しみを抱えたまま街を彷徨うマキ。そして、ふとした出来心でノン・アルコホル・バール「ゲコ・バール」に立ち寄る――

1. 激情にまかせて弾いた

2. 勘違い野郎に惚れられて振られて、手痛い傷を

3. ODでしょ? 自殺しようとしたんでしょ? 

4. 「君、ゲイだよね?」

5. 虹色に輝くノンアルコホル・カクテルを飲みながら

6. 一度言われてみたかった台詞 「男のクセに」

7. 全てを超越し、音楽だけに渾身

近々、本編『アカデミアン・ラヴァ―ズ』も公開する予定です。

 

 

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.01.21

1月21日の朝

800pxlouis_xvi_et_marieantoinette_2     ※サン=ドニ大聖堂のルイ16世の慰霊碑 (C)Eric Pouhier

 小学生のとき読んだシュテファン・ツヴァイクの『マリー・アントワネット』の小学生向けダイジェスト版『悲しみの王妃』に「1月21日の朝」という章があったのを覚えている。ちょうど220年前、1793年の今日の朝、フランス国王ルイ16世ギロチンの露と消えた。ルイ16世の後世の評価は様々だが、華麗なるルイ14世ルイ15世王妃マリー・アントワネットと比べて、何とも影が薄い存在である。

 ルイ16世が優柔不断だったため王妃の浪費を招いたともいわれるが、絶対王政全盛の時代なら平穏な人生を送れたかも知れない。よりによって革命期に王位を継ぐ番が回ってくるとは、最悪の貧乏くじを引いてしまったと言わざるを得ない。

 そのルイ16世の最期の言葉は、太鼓の音に消されて全ては聞き取れなかったとされるが、次のようであったと伝えられる。

  余は、余の全ての敵を許す。
  余の血がフランス国民にとって有益ならんことを、
  そして神の怒りを鎮めんことを、余は切望する。

 ギロチンで斬首される寸前に、「全ての敵を許す」とは、なかなかかっこいいではないか。ルイ16世はフランス大革命において最大の敗北者だったが、最期まで王だった。王に相応しい器の大きさを失わなかったと評価していいだろう。

 勝者となるにこしたことはないが、運命的に敗者となるのを避けられない場合、敗北の美学敗者のヒロイズムを極めて潔く美しく滅び去る道を選ぶしかない。ルイ16世の最期の言葉は単なるヒロイズムではなく、本心からの叫びだったのだろうが、それだけにかっこいい。

 と、ここまではほとんどが2011年1月22日の記事のコピペ。
http://hyperion.cocolog-nifty.com/hyperion/2010/01/post-9916.html
 最後に時勢を反映したオチをつけたいが、何も思い浮かばない。それより、1月21日もあと1時間10分ほどで終わってしまうので早くアップしよう。
 
 
  

 
  
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.01.20

「輝ける皇妃エリザベート展」 レヴュー

輝ける皇妃エリザベート展
[そごう美術館(横浜) 2013年1月2日~1月23日]

389pxwinterhalter_elisabeth_2 オーストリア皇后エリーザベトには以前から憧れていた。豊かな髪をもつ絶世の美女だったこと、美容オタクでお肌やお髪(ぐし)のケア、そして体型維持のトレーニングを欠かさなかったこと、乗馬が得意で旅行が趣味のアクティブな女性だったこと、文学的才能があったこと、姑との関係に苦労したこと、国民から絶大な人気があったこと・・・など、皇妃エリーザベトのことはミュージカルを見たわけでもないのに色々と知識があったので、このエキシビションは彼女にゆかりの品や様々な年代における彼女の肖像、彼女を取り巻く風景をビジュアルで確認することができて楽しかった。

 ただ一つ、私が一番知っている部分―ルードヴィヒ2世との関わり―がすっぽり割愛されていた。見落としもあるかもしれないが、ルードヴィヒ2世の名はただ1か所、系図に載せられているのみである。フランツ・ヨーゼフ2世に出会うより前の少女時代、近しい親戚、同じヴィテルスバッハ家のルードヴィヒとの魂の交流、8歳年下の少年と遊んだ日々、皇后となった後の文通、ルードヴィヒ2世と妹ゾフィーとの婚約と破局、彼の悲劇的な死など、この展示では一切触れられていなかった。

 ルードヴィヒ2世との関連においてしかこの偉大なる女性を知ろうとしなかった私の知識が偏っていたというだけのことなので、それが不満と主張するつもりはない。スケールにおいては恐らくルードヴィヒ2世よりも偉大だったこの女性に憧憬と敬意を抱きながらも、彼女その人に注目したことがあまりなかったのは、私の偏光性を示すものでもある。

 テーマ通り、「輝ける皇妃」としてのエリザベート像が明確に示され、あまり知識のない人も楽しみながら、この高貴な女性の生涯を知ることのできる展示となっていた。母娘で鑑賞に来ている方も多く「きれいね」「すてきね」と感嘆の声をあげながら観ている少女達の姿が微笑ましかった。ただ、当然のことであるが、この偉大な女性は、私が知っているルードヴィヒ2世との友情のように、このわかりやすく楽しい展示だけでは知り得ないもっと深い部分を他にも色々ともっていたことを忘れないで欲しいと思う。

 ピンクの布貼り表紙の図録をはじめ、ミュージアムショップには様々なエリザベートグッズが並んでおり、私もお揃いのハンカチ等、色々と買い込んでしまった。オーストリアに観光客を呼び、ミュージカルが上演され、日本で開催の「輝ける皇妃エリザベート展」でも人気を博しているという皇妃エリーザベト。死後1世紀以上を経て、彼女は生前以上に魅力を放ち、世界中の人々に愛されている。エリーザベトこそ真の女王である。
 
  
   
   

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.01.10

A Suggestion to Mr. Brian Orser

Sakuranosono
I am an enthusiastic Yuzuru Hanyu fan.
Thank you for your nice coaching for him.
His performance in this season is perfect and unbelievably beautifull!


ShidareI would like to request you about his next season SP program.
At the Olympic, some judges and figure skating fans may expect Japanese skaters to skate with traditional Japanese image.
So, I believe “Sakura Fubuki (=cherry blossom shower/storm)” is the best theme.
Have you seen the beautiful scene of cherry blossom shower? When we see so many pale pink petals are falling in the wind, we are deeply fascinated by the tremendous beauty of short-lived flowers. He is the only skater who can represent such beauty. Female skaters never can skate on this theme. His quad jump is needed to represent such beautiful image.


Fotolia_7084080_xsFor music, I reccoment Sadao Bekku's "Sakura Yokocho".
Please listen to singing of Yoshikazu Mera, a famous Japanese Counter Tenor.


That is only one fan’s idea or illusion.
But if he wishes to skate on this theme, please realize his hope.

Fotolia_16640547_s






| | Comments (0) | TrackBack (0)

フィギュアスケーター羽生結弦に捧ぐ妄想

 快進撃中の天才美少年フィギュアスケーター羽生結弦から目が離せない。

 今シーズンはSP「パリの散歩道」で史上最高得点をどんどん更新していって欲しいし、FS「ノートル・ダム・ド・パリ」を成功させて彼自身が微笑む顔が見たい。

 そして、ソチ・オリンピックに向けて健康を維持しつつ、さらなる高みを目指してほしい。彼に願うことはただそれだけ。ファンとしては、「頑張って! 愛してるよ!」と言うしかない。

 しかし、溜め込んでいると私の健康に差し支えるので、思いついたことをここに書き出してみることにする。実現可能性は低いので提案というより妄想に過ぎないが。

以下、羽生クンへ。

 世界中の人が注目するオリンピックで、和ものをやってみない? 今シーズンの無良崇人のFSもストイックな感じでかっこいいけど、君のエキシビション「花になれ」も素敵。あのお花柄のキモノ風コスも似合ってる。だからそっちの路線で。

 来シーズンのSPのテーマは、ぜひ「桜吹雪」で。2回以上の4回転ジャンプを決めてほしい。イナバウアービールマンスピンもやって。あとはまかせる! はんなりとたおやかに、そして激しく凛々しくね。

 私は見たことないけど、仙台の桜でいいんじゃないかな? 風に舞い散る無数の花びら。あの幽玄にして壮絶な美しさは女子には表現できない。技術的にも、雰囲気的にも、君じゃないと無理。

 音楽には、別宮貞雄作曲の「さくら横ちょう」がお奨め。滑りやすいように、「さくら横ちょう ヴァイオリンによる変奏曲 羽生結弦ソチ・オリンピックヴァージョン」を編曲してもらってね。まずはカウンターテナー米良美一さんのを聞いてみてね(中田喜直作曲のもあるから間違えないように)。

 以上、一ファンからの提案、じゃなくて妄想でした。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.01.08

羽生結弦、熾烈な優勝争いに勝利! ノーミスながら無念の4回転サルコウ

フィギュアスケート全日本選手権 レビュー (3)

 高橋大輔の熱演の直後には清涼剤としてちょうどよい(こんなことを言っては申し訳ないが)淡泊なまでに上品な中村健人という絶妙の滑走順になっており、ブレードの故障で直前に棄権という堀之内雄基の気の毒だが珍しい災難や小塚崇彦の不調による番狂わせといったハプニングもあり、そして、何といっても全体的なレベルの高さで、今シーズンの男子シングルFS後半戦は全体として見応えがあった。

 そして、最終滑走者は、SPで自己の史上最高得点を凌駕した羽生結弦。SP2位の高橋が歴史に残る名演技で観客を沸かせた後で追い上げてきた後で滑るのにはプレッシャーに打ち勝つ精神力が必要だ。今シーズンの羽生は、SPでは史上最高得点を獲得し自ら更新するほどの完成度の高さを見せているが、FSでは何かしらミスが出ていた。

 FS後半でのスタミナ切れは羽生がまだ克服していない課題だが、スタミナ維持に配慮した構成が組まれたことは恐らく一度もない。コーチも、振付師も、この若く才能あふれるスケーターを甘やかすことは決してしないし、彼自身も常に挑戦する姿勢を崩すことはない。FSの後半にも容赦なく迫力ある動きやジャンプを入れ、全体のバランス、得点のためにも最良の構成となっている。FS後半のスタミナ切れや集中力の途切れで些細なミスをきたし、優勝を逃したことも何度かあり、そうした若さや青ささえも、彼の魅力だった。

 ところが今シーズンの羽生は、FSでの課題を克服しないうちに、優勝を手中にできるようになっていた。SPで史上最高という高得点を獲得し、FSが万全でなくても逃げ切ることが可能になったのだ。今回もSPを終えた時点で2位の高橋に大差をつけることに成功していたが、高橋が圧巻の「道化師」で追い上げてきたため、FSを完璧に滑り切らないと優勝は難しくなった。

 恐らく初めて体験する重圧、しかも最終滑走者というプレッシャーに、18歳の高校生、羽生結弦は打ち克つことができるのだろうか? ファンとしては、出来栄えよりもそちらの方が心配だった。

 今回のFSプログラムは冒頭に2つの4回転ジャンプを、トゥループサルコウという2種類で入れ、コンビネーションジャンプトリプルアクセルなど高得点のジャンプを盛り込んだ、難度が高く、その分得点が稼げる構成となっている。そして、現在、男子では彼にしかできない、彼にしか似合わないビールマン・スピンやイナバウアーも外すことなく、ファンの期待に応えてくれている。いつもは終盤で見せるビールマン・スピンを、今回は中盤で当たり前のようにやってのけている。

 大丈夫。計算されたプログラムを予定された通りにこなせば勝てるから……。でも、まだ若いんだし、もし何かが起こっても、それはそれでいい経験だから……。

 否、そんな感傷的な応援は今の彼には不要だった。2種類の4回転ジャンプの着氷が両方とも乱れたものの、記録上はノーミス。綿密に設計されたプログラムを確実にこなすことができた。結局、史上最高得点更新のSPのスコアとの合算で、羽生のスコアが高橋を上回った。こうして、全日本選手権史上稀にみる熾烈な闘いとなった高橋、羽生の優勝対決は羽生の勝利に終わった。

 得点が示す通り、FSの出来は高橋のほうが上回っていた。羽生のFSには4回転ジャンプの不確実さ、後半のスピードダウンなど、まだまだ課題が残されていた。そして、それは誰に指摘されるまでもなく羽生自身の身に染みていた。FSを滑り終えたとき、記録上ノーミスであることはわかっていただろう。しかし、彼は笑顔をみせず、4回転サルコウで着氷した地点を確認に行った。減点対象にはならなかったものの、彼にとっては決して満足のいく結果ではなかった。そんな彼の姿がまたファンの感動を誘った。彼はまだまだ成長していくだろう。

 「もはやあどけなさはない」と成長ぶりが強調されている羽生。SP「パリの散歩道」はシンプルに洗練されたモノトーンの衣装で、イメージチェンジを狙ったのかとも思われたが、FS「ノートルダム・ド・パリ」のコスチュームは、白地にピンク~赤のグラデーションが入ったカラーリング、そしてフリルの入ったジョニー・ウィアー風。まだあどけなさの残る彼によく似合っている。ついでに言えば、ジョニー・ウィアーが2008-2009シーズンのFSを同じ曲で滑ったときの黒い衣装に似ており、同じ位置に大きな十字架がある。
 
 この種のデザインが彼自身の好みなのだとしたら、似合うのだから、その感性もいつまでも大切にしてほしいと願う。成長することを期待され、応え続けている彼であるが、自分自身の方向をしっかりとつかんでいてほしいと思う。これも無用の心配だろうが。

 ジョニー・ウィアー不在中の寂しさを埋め合わせてくれる存在として、羽生結弦を応援してきた私であるが、この瞬間、すっかり彼自身のファンになっていることを自覚した。この文章自体、「フィギュア・スケーター羽生結弦に捧ぐ妄想」というタイトルで書き始めたものだが、前置きの全日本選手権レビューが長文化してしまった。

 ついに羽生結弦が頂点に立った日本のフィギュアスケート男子シングル。これからもますます面白くなっていくことだろう。世界選手権、そしてソチ・オリンピックが楽しみだ。

 
  
  

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.01.06

高橋大輔の新たなる挑戦、ヴェリズモ・オペラ「道化師」を熱演!

フィギュアスケート全日本選手権 レビュー (2)

 男子シングルFSで最高得点を獲得したのは、高橋大輔の「道化師」だった。

  昨シーズン、その前のシーズンのエキシビションでは、感傷的ともいえる繊細な演技を披露した高橋だった。その一種中性的ともいえる繊細さに彼の競技会ではまだ見せていない一面が髣髴され、今シーズンあたり、そちらの方向で新しいプログラムを見せてくれるのではと秘かに期待していたが、レオンカヴァッロの「道化師」とは、見事に期待を裏切ってくれた。

 道化師は彼のライフテーマなのだろう。バンクーバー・オリンピックのFS「道」でも、道化師の衣装で滑り、名演技を披露した。映画音楽の「道(ラ・ストラーダ)」に対し、オペラ「道化師(パリアッチ)」の曲想は比べようがないくらい重い。

 オペラの曲で滑るのは珍しいことではない。ステファン・ランビエールがバンクーバー・オリンピックのFSで滑ったのはヴェルディのプリマドンナ・オペラ『椿姫』だったし、今シーズン、パトリック・チャンのFSはプッチーニの「ラ・ボエーム」からの選曲である。どちらも、抒情的な要素もある後期ロマン派オペラで、軽やかさを維持しながら滑れる曲構成になっていたように思う。

 しかし、「道化師」はオペラの中でも凄まじい重量感のあるヴェリズモ・オペラである。道化役者トニオ(バリトン)による明るくも不吉な前口上のアリア、主人公の道化一座座長カニオ(テノール)が舞台の本番直前に妻の浮気を知り嫉妬に苦悩し感情むき出しで歌いあげるアリア「衣装をつけろ」など、重苦しい曲で構成された音楽。決して踊りやすい曲とは言えないだろう。

 オペラの結末で、道化師カニオは妻を刺殺し愛人を刺し泣き崩れる。自殺して果てるよりも後味の悪い幕切れである。どろどろと煮えたぎった激情、救いようのない絶望が行き場もなく昇華されないで舞台に残る。この世界をフィギュアで表現することができるのだろうか? 今シーズン、高橋はこのプログラムをなかなかノーミスで滑りきることができないでいた。音楽のあまりの暗さ、激しさ、重苦しさが彼の「踊り」で魅せるスケーティングに合っていないのでは?と心配になっていた。

 ところが、そんな心配は無用だった。全日本選手権FSの大舞台で、高橋はついに圧巻の完成度で「道化師」を滑りきったのだ。プロローグの重厚で緊張感も高い音楽で、2回転の4回転ジャンプも見事に成功させた。後半のグラフィック・シークエンスでは、彼自身の持ち味を生かした華麗なステップを披露することもでき、会場を沸かせた。衣装の一部をリンクに落としたため1点の減点となったが、いかに白熱した演技であったかを物語る物証ともいえるだろう。

 世界最高レベルの日本人選手同士の鬩ぎ合いの中で、高橋の能力が最大限に開花し、ヴェリズモ・オペラ「道化師」の音楽に負けない強さ、熱さ、そして技術を彼自身が備えていることが十分に証明された。おそらく彼自身のテーマでもある道化師が、ついにここに集大成された。フィギュアスケーター高橋大輔がついに一つの頂点を極め、ここに完成をみたともいえるだろう。いや、今シーズンの世界選手権、ソチ・オリンピックに向かって、さらなる高みを目指してほしい。

 2013年シーズン、全日本選手権男子シングルFS、高橋大輔の「道化師」は、歴史に残る名演技だった。あの瞬間を見届けた幸運に感謝する。  (つづく)
 
  

 
  
  
  
  
  
  
  
  

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.01.05

フィギュアスケートは断然、男子シングル!

フィギュアスケート全日本選手権 レビュー(1)

 フィギュアスケートは女子シングルよりも断然、男子シングルが面白い。

 世間一般ではむしろ女子の方に注目が集まっているらしく、実際、テレビの放映時間も女子シングルの方が長めになっている。特に、今シーズンの地上波放送のグランプリシリーズでの男子シングルの扱いはひどかった。時間があればテレビ朝日に正式に抗議を申し上げたい。その点、全日本選手権を放映したフジテレビはかなりマシだったと評価できる。

 テレビ局評はさておき、今シーズンの日本の男子シングルは最高に素晴らしい。全日本選手権では男子シングルの面白さを堪能させてもらった。申し訳ないが、現在の女子シングルは役者不足。浅田真央にトリプルアクセルを強要するのは酷なような気もするが、今回、3回転+3回転のコンビネーションジャンプに挑んだ選手も極端に少なく、技術的にもう少しハイレベルなものを見せてほしい。また、安藤美姫の不在分は鈴木明子が頑張ってくれているが、安藤のようなダイナミックな演技を見せる女子スケーターは見当たらず、役者不足の感がある。

 その点、男子シングルは役者が揃っている。トップ6名の強化選手はもちろん、その次のランクに相当する選手たちも十分に注目に値する。独特の動きで不思議な世界を確立している佐々木彰生にファンが多いのは頷けるし、中村健人の気品ある滑りは、高橋大輔の濃厚な「道化師」の熱演直後の清涼剤としてちょうどよかった。今は次点ランクにいる彼らもぜひ世界の舞台に立つ機会を獲得してほしいと願う。

 彼らの存在を確認できただけでも、今シーズンの全日本選手権は収穫だったが、何といっても、目を離せないのは、トップ6名の4回転対決。もちろん、観るべきものはそれだけではないが、今や男子シングルで世界の舞台に立つには、4回転ジャンプはもはや必須。それも、1回だけでは足りない。また、誰もが当たり前のようにさりげなく跳ぶトリプルアクセルや、難度も得点も高いコンビネーションジャンプも見逃せない。

 今回、世界選手権の出場権を獲得した無良崇人のジャンプの高さ、速さには目をみはるものがあった。今シーズンのFSのプログラムはシンプルながら日本の伝統美の要素が凝縮されており、世界の舞台で披露するに相応しい。世界選手権でもぜひ頑張ってほしい。  (つづく)



| | Comments (0) | TrackBack (0)

2012.12.30

全てを超越し、ただただ音楽だけに渾身

小説 『ゲコ・バール』 第7回 (最終回)
Clock 「じゃ、ソサイアティCEOからのインヴィを送るから、すぐに手続きしてね」
 キョウジュはマキのKTに向けて送信した。
 一般にソサイアティへの入会にはフェロー2名以上の推薦とCEOらの承認が必要なのでもっと時間がかかるものだが、CEOが直々に招待した場合、チェックを1箇所入れた瞬間に入会が成立する。
 あまりに簡単なその操作をやってしまうと、すぐにWelcomeメールが返ってきた。それを開けて確認する間もなく、キョウジュは言った。

「彼が退院してきたら色々やってもらいたいからよろしくね」
「色々って?」
「まずは自警団を結成する。彼がもう二度とあんなことをしないように、何としても守るんだ。外出のときは必ずガードすること。夜は、シェルの前で寝ずの番だ」
「そこまでやるんですか? すごいなあ。そんなことしたらストーカー認定されてしまいますよ」
 エゴンが言った。
「もちろん、彼には気づかれないように、そっとやるんだ。いいね?」
「ハ、ハイ・・・・・・」
「任せたぞ、男だったらしっかりガードしてくれたまえ」
「はい!」

 何やら面倒なことに巻き込まれたようだが、「男」と呼ばれることに無上の喜びを感じてしまうマキだった。
 キョウジュはユリアス・セレナの話題に花を咲かせ、いかに彼の音楽が素晴らしいか、いかに彼が美しいか、延々と語った。エゴンは他の席に移ってしまったが、マキは根気よく聞いてやった。いかにも男が飲むような仕草でノンアルコホルの酩酊ドリンクを飲み干していくうちにほろ酔い気分になり、心の傷みが麻痺していくような感覚を覚えるのだった。

 こうしてゲコ・バールには飲めない輩が長時間居座り、立ち飲み客も増えていった。そこへ突然、アカデミアTVの腕章をつけた男女が入ってきて、キョウジュを見つけるなり全速で駆け寄ってきた。
「教授! M.M.教授! 早くレクチャースタジオにお戻りください」
 何と彼は本当に教授だったのか? しかも、M.M.教授といえば現代音楽研究においてはエトワール級の大家で、リモート・レクチャー(遠隔講義)の大家として世界中から絶大な人気がある。

「え? もうそういう時間?」
「ご支度を!」
「オッケー!」
 TV局員の一人が服装の乱れを直しタイを締めて髪に櫛を入れると、MM教授はたちまち酔っ払いのオジサンからアカデミアン・ジェントルマンに様変わりした。
「教授、眼鏡をお忘れなく。度入りレンズでしょ?それ」
 2030年頃からハイパーレーシック療法が普及し、先進国ではもう近視は絶滅同然なので度入りレンズの眼鏡はとても珍しい。
 ということは、教授が男扱いしてくれたのは近視で顔がよく見えなかったからなのかも知れない。

「もう間に合わないから、ここでライブしましょう!」
「リモレクを飲み屋で?」
「うちはかまいませんよ、宣伝になるし」
 バールのマスターが言った。
 世界に向けてのリモート・レクチャでも、ライブ放映するのは簡単だ。ライブが売りのレクチャーなので、場所はどこでも時間通りに開講しなければならない。
「聴講生として出演しますよ」
 エゴンが言うと、僕も、私もと、たくさんの若者たちが集まってきたので、教授もすっかりその気になってきた。M.M.教授のリモート・レクチャをリアルで、しかも無料で聴講できるとは幸運なことだ。

「BGMにヴァイオリンを入れるよ」
 眼鏡をかけてすっかり準備の整ったM.M.教授がTV局員に言った。
「生ヴァイオリン。演奏者は、えっと……」
「マキ,シオンです」
「うむ、マキ君、適当に弾いて盛り上げてくれたまえ」
「い、いいんですか?」
 マキの心は踊った。コンテンポラリー・ミュージックの分野では聴講者が世界最多ともいわれるM.M.教授のリモートレクチャで弾けるとは、幸運なことだ。
「ギャラをあげてね」
 教授が言うと、TV局員は事務的に答えた。
「クォリティによりますよ。キャプションを入れてあげよう。プロフィールを教えて」
「マキ,シオン。19歳。アカデミア大学アート学部音楽学科ヴァイオリン専攻。JPNジュニア音楽コンクール1位なしの2位。FTM」
「え? エフティー……?」
 異様に盛り上がる周りの雑音で、TV局員は最後の単語を聞き逃した。
「いえ、やっぱり、マキ,シオン。19歳。それだけでいいです」
「BGMだからね、節度をわきまえてね」
 TV局員からの指示はそれだけだった。受信エリア最大ののリモートレクチャなのにスタッフはたった二人なのだから大忙しだ。

 マキは早速調弦を始めた。楽器のコンディションは今ひとつだが、弾く気は満々だ。俺はまだ蒼い。自分の力ではどうにもできないことが多すぎる。考えても考えても、どうにもならないことがばかりだ。それならもう、弾くしかない。
 ノンアルコホルの酩酊ドリンクが効いてきたのだろうか? 泣き喚きたい気分はどこかに吹っ飛んでいた。

 M.M.教授のリモート・レクチャが予定通り始まり、マキは言われた通りにBGMを「適当に弾いて盛り上げて」いった。世界中のTVやKTスクリーンに、ゲコ・バールの酩酊アートを背景に情熱的に語る教授の姿が映し出され、そして教授が沈黙したとき、ヴァイオリニストにカメラが向けられた。

 黒髪を振り乱して弾くマキの姿に世界中の人が注目し、そしてまだ蒼い彼の音に耳を傾けた。パガニーニの変奏曲がいつの間にか、教授が語る現代音楽よりも斬新な即興演奏、これまで誰も聴いたことのない類の未知の音楽に発展していた。BGMとしての節度を保つことなんてすぐに忘れてしまった。TV局員は苦笑したが、講師のM.M.教授も聴衆もそんな彼の未熟さを許し、才能と可能性を秘めたその音に耳を傾けた。マキ,シオンはもう何も考えていなかった。彼が抱える全ての状態、彼を取り巻く全ての状況を超越し、ただただ音楽だけに渾身し、自分の音に陶酔したような表情でヴァイオリンを弾き続けた。    (了)



| | Comments (0) | TrackBack (0)

2012.12.23

羽生結弦クンへ 蒼き時を過ぎても愛してる

 羽生クン、全日本選手権優勝おめでとう!
 
 ついにやったね!
 君なら勝てると信じてた。

 今回の男子シングル、おもしろかったね。
 いつも君のことばかり見ていたから気づかなかったけど、佐々木彰生君みたいなキャラクター系や中村健人君みたいな王子系もいるのね。
 無良君、世界選手権、出場決まってよかったね。小塚君、どうしちゃったのかな? どこか故障してないか心配。

 でも、やっぱり君が一番!
 今回の君、すごかったよ。高橋君のあの名演技で追い上げられて、あのプレッシャーの中、ノーミスに近い演技で見事に優勝。
 でも、君は笑わなかったよね?
 優勝できたけど、君は満足できなかった。
 4回転、こらえたけど、着氷が乱れたこと。後半でいつものスピードと迫力が出せなかったこと。
 色々反省点があるからだよね?
 君自身が一番よくわかってる。
 だから君は、演技を終えたとき、にこりともしなかった。

 君は精神的にも成長したね。大人になったね。
 少年の時を超えて、前へ前へ、上へ上へと、進めばいい。翔べばいい。
 いつまでも少年のままでいて欲しいと思ってた。
 少年の君を愛してると言った。
 まだ青い君を愛してるなんて言った。
 でも、蒼い時を過ぎても、いつまでも君を愛してる。

 ビールマンスピンとイナバウアーは入れるのよ。
 ピンクもフリルもいつまでも着ていいのよ。
 それだけ。

 君は強い。君は美しい。
 君のままの君を 君を超えていく君を
 いつまでも愛してる!

  
  

 

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2012.12.06

一度言われてみたかった台詞「男のクセに」

小説 『ゲコ・バール』 第6回
Abstract
「君が、君があんなことを言うから!」
 キョウジュは、黒いブラウスの衿元をつかみマキの顔を至近距離で見ながら、ひどく情けない口調で言った。
「だいたい、何だい、男のクセにお化粧なんかして」
 が、それまでだった。筋骨逞しいスタッフが飛んできて、酔っ払いの手を掴んで言った。
「さあ、手をポケットに入れてください。報告されたくなかったら」
 パワーナース資格者だろうか? 事務的なまでに手際良く、酔っ払いを正気に戻してしまった。酔っ払いといっても、アルコホルは1滴も飲んでないのだから回復は早い。

キョウジュは自分の行為に恥入った様子で、力なく言った。
「ごめんね」
「いえ」
 マキは実際、怒ってなどいなかった。むしろ嬉しかった。一度言われてみたかった台詞「男のクセに」をこの人が言ってくれたのだ。

 いつも「女のクセに」そんな男っぽい格好をして! と言われてきた。FTMをカムアウトしてからも、ずっと。ホルモン治療を始めてからも。今日も男子楽屋で「女の子は出て行ってくれないかな?」なんて言われてしまった。 バールで酔っ払いのおじさんにからまれて衿元をつかまれ「男のクセに」と喧嘩を売られる。これこそ、夢にまで見ていたことだった。ここまで完璧に男扱いしてもらえたのは生まれて初めてかも知れない。

 気さくにつきあえる男友達は大勢いるしFTMであることに理解を示してくれる。ところが、どういうわけか皆がアカデミアン・ジェントルマンの作法でそれはそれは紳士的に接してくれる。もっとぞんざいに扱ってくれてもいいのに。

「気にしてませんから」
 マキは爽やかに言った。
「ごめんね、彼のことになると、つい・・・・・・」
 マキは「男のクセに」を初めて言ってくれたこの人、大切な人がODで病院に運び込まれたという何やら自分と同じようなこの人に、年はかなり離れているが、親しみを覚えていた。
「実は僕も今日、友人がODで病院に。助かったけど、何もできなかった自分が悔しくて・・・・・・」
「それでここに来たんだね?」
「えっと……、まあ、そうです。突然コンタクトを切られたから、見舞いにも行けなくて」
「それはつらいね。飲もう! 気に病んでもどうしようもないんだ。どうせノンアルコホルだからいくらでも飲めばいい。私が奢るよ」
「いいなあ・・・・・・」
 エゴンがボソリと言った。

「ソサイアティに入会するなら君も奢ってあげよう。会長招待の特別会員だ」
「ユリアス・セレナ・ソサイアティ? うーん、魅力的だけど、僕は四つしか入れなくて、もう三つ入ってるから、どうしようかなあ?」
 エゴンはスキンヘッドを抱え込んで真剣に悩んでいた。
「ユリアス・セレナ? バロック音楽家の。天才リューティストにして天才チェンバリスト・・・・・・」

 マキがぽつりと言うと、すぐに「教授」が反応してきた。
「ユリィの音楽は、好き?」
「ええ
「ソサイアティ、まだ入れる?」
「ええ」
「じゃ、入会ね」

 ソサイアティ活動なんてするヒマはないので、オリエンタル・ソサイアティとGIDソサイアティにしか入っていない。あと一つしか入れないのだが、これも何かの縁だ。ファンというほどでもないが、確かにユリアス・セレナの音楽は素晴らしいと思う。そして、実は彼の音楽を聴く前から、この繊細すぎる美少年自身に興味があった。

 ユリアス・セレナ、通称ユリィ、17歳。スキップ入学した早熟の天才。ALN出身のアンファン、つまり戦災孤児。ミルコス・クロエと同郷で同じ境遇、しかも同じ音楽家なので当然仲がいい。

 マキがユリィに興味を抱くのにはもう一つ理由があった。カムアウトしたとは聞かないが、ユリィはどう見てもMTFだ。つまり、マキとは反対で女性の心を持ちながら男性の体で生まれたというタイプ。本人に確認したわけではないが、マキには確信があった。GIDの同族は一目でわかる。
 ユリアス・セレナは絶世の美少年、音楽界の貴公子、リュートの王子様などと呼ばれているが、それは間違いだ。ユリィは王子ではなく、姫なのだ。

 今さらミルコに近づきたくて同郷の音楽家の応援ソサイアティにわざわざ入会するなんて、何とも未練がましくて女々しくて自分が嫌になりそうだ。それに、同じアーティスト・ハウスに住んでいるらしいので、彼に近づきたかったらわざわざファンソサイアティに入らなくても直接話しかければいい。しかし、何だか面白そうだから、ここノリに押されて入会してしまおう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2012.11.06

書き急げ!時間がない!全くない!

Landscape 毎日毎日、六本木に行く日々が終了し、毎日毎日、横浜へ行く日々が開始してからもうじき2か月になるが、そんなことを書いているヒマもないくらいの「書き急げ!」モードに突入してしまった。
  
 修士論文の提出が12月19日。しかし、やっと構想が固まり、第1章を書き上げたところ。間に合うのか??? いや、間に合わせる。予定通り修士を取得して次へ進みたい。

 というわけで、ブログを更新しているヒマなんてないので、これにて中断。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

«羽生結弦クンへ  まだあどけない君を愛してる  [開幕! GPシリーズ]