沖縄本島北部の山間部にあるカトリック系の全寮制/中高一貫制の男子校「聖フランチェスコ学院」で繰り広げられる少年たちの青春。Part.1は、優等生の生徒会長ナオ君のお話でした。Part2はファザコンで寂しがりやのユージュくんのお話、テーマは「おとなのADHD」です。
※テーマとあまり関係なく、性描写が含まれる場合があります。また、同性愛的シーンも恐らく出てくると思いますので、苦手な方は読まないで下さい。
第1章 医務室にて
「ばっかじゃないの?」 と、瑠璃矢は言った。
平手打ちをくらった頬が痛くて、悠樹は何も言えなかった。華奢な瑠璃矢にこんなに力があるとは思わなかった。
「誰にでも応じると思ったら大間違いさ。キミみたいのはね、趣味じゃないんだ」
瑠璃矢は恐るべき手際良さで制服を着こむと、ベッドの掛布をくしゃくしゃにしたまま、医務室を出て行った。
「クッ、クッ、クッ……」
隣のベッドから笑い声が聞こえたかと思うと、李が突然起き上がり、ベッドを仕切るカーテンを開けた。今度は腹をかかえて大笑いしている。
「ま、まさかお前が、こんな、こんな……」
李は豪快に笑い続けた。そして、瑠璃矢の口調をまねて、
「ばっかじゃないの?」と言った。
瑠璃矢は医務室のベッドで休むとき、いつも全裸になる。夏休みが近づくと、仮病をつかって午後の授業をサボり、冷房の効いた医務室に篭っていることが多くなる。本当に具合が悪くて医務室で休養に来た者が、あられもない姿で眠る瑠璃矢、いや、寝たふりをする瑠璃矢を目にしてぎょっとすることも度々だ。
瑠璃矢は怠惰で性悪だが、美しい。客観的事実として、美しい。身体のパーツ一つ一つが、造形的に色彩的に申し分ないほど美しい。それがまた完璧な調和をもって組み合わせられ、絵画のような、というより精巧なガラスの彫刻のような芸術作品として完成している。一種人工的で、どこか嘘っぽいまでに美しい。瑠璃矢はそういった類の美少年だった。
瑠璃矢が狂っていることは、瑠璃矢が美しいということと同等に、誰の目にも明らかだ。実際、医務室のベッドでも、露出狂の発作ばかりか、色情狂の発作も起こし、隣のベッドに休みに来た体調の悪い者に抱きついてくることもあった。
しかし、今日の瑠璃矢はまともだった。悠樹がベッドに入り込んできたら、いきなり平手打ちを喰らわしたのだから。しかし、悠樹には、どんな反応をされようとどうでもよかった。仕切りのカーテンをわざと少し開けておいた。隣のベッドにいた李が隙間から全て目撃したにちがいない。それが重要だった。
頬の痛みが少しおさまり、李の笑いも大方おさまると、悠樹はハッと我にかえった。服を着ようとしたが、下着が見つからない、それも、ブリーフが。
「脱いだのかよ? 全部。ほんとにバカだな、お前って。瑠璃矢が本当にその気になってたらどうしてたんだよ?」
上はネクタイまで締めたが、下が見つからないので、ベッドから出ることができない。
(つづく)