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2007.04.24

アーサー王伝説 二つの映画

Excalivur1
『エクスカリバー』 原題 : Excalibur
製作年 : 1981年  製作国 : アメリカ  配給 : ワーナー・ブラザース映画配給
製作・監督 : ジョン・ブアマン
出演(役名) :ナイジェル・テリー (King Arthur)  ヘレン・ミレン (Morganna)   ニコラス・クレイ (Lancelot)  チェリー・ランギ (Guenivere)

「アーサー王」の壮大な伝説を2時間枠にコンパクトに収めた作品。
マーリンの視点で語られるため、非常にわかりやすいが、肝心のアーサー王の存在感が薄れている感あり。ケルト的魔法使いや妖精たちの怪しい世界、異父姉モルガン・ル・フェイとアーサーとの近親相姦、グウィネヴィアとランスロットの不倫愛、シャロットの乙女、憎まれっ子モードレッドなど、伝説の主要を成すエッセンスが要領よく詰め込まれている。ただ、聖杯伝説やトリスタンとイゾルデなど、カットされたエピソードも多く(2時間版なので当然)不満は残る。特に、アーサーの死の扱いがあまりにも雑。老残のマーリンとニムエの再会なんてどうでもいいから、アヴァロン島のシーンを伝説通りに見せて欲しかった。
欲を言えばきりがないが、この映画は、手っ取り早く「アーサー王伝説」の雰囲気を味わいたいという人にはお奨めの作品。導入版としては小ぢんまりとよくまとまっている。出演者は美男美女揃いで、映像もラファエル前派の絵画のように美しく、耽美で絢爛な色彩に魅了される。戦闘シーンは今ひとつ迫力に欠けるが、アクション映画ではなくハリー・ポッターに通じるファンタジー映画として、「アーサー王」の映像世界を堪能することができる。

180分のノーカット版もあるので、物足りない方はこちらを観てみるのもいいだろう。もっとも、「アーサー王」を一編の映画におさめること自体が無理な話なので、こちらもやはり物足りないだろう。

Arthur
『キング・アーサー』
製作年 : 2004年  製作国 : アメリカ  配給 : ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)
製作 : ジェリー・ブラッカイマー  監督 : アントワン・フークワ  脚本 : デイヴィッド・フランゾーニ
出演 : クライヴ・オーエン 、 キーラ・ナイトレイ 、 ヨアン・グリフィズ 、 ステラン・スカルスゲールド

こちらはいわゆる「アーサー王伝説」に親しんでいる欧米人にとっては???な映画かも知れない。アーサーも円卓の騎士たちも全員、サルマート人。サルマート人というのは、南ウクライナを中心に活動していたイラン系遊牧民族。重装武装の騎馬戦闘術に優れ、4世紀、ローマ帝国に征服された後、傭兵としてブリタニア遠征で武勇を発揮した。このあたりは映画の冒頭に詳しく語られている。中世ヨーロッパの英雄、アーサーが東方の遊牧民族出身というのは似合わないように思えるだろうが、、荒唐無稽というわけではない。現代では、アーサー=サルマート人説は有力な学説なのだ。しかし、ランスロットもトリスタンもサルマート人だなんて、あり得ない!と、思うのは私だけだろうか?
マーリンもモルガン・ル・フェイもモードレットも出てこないし、伝説のエピソードはほとんど無視。伝説とは違っているが、史実かも知れないアーサーを意図しているのだろう。時代的にも、実在のアーサーは4世紀後半~5世紀の人物なので、中世の写本のように絢爛な世界ではなく、実際、あのような地味な色彩の世界に生きていたのだろう。
しかし、どうしても許せないのは、グウィネヴィアがピクト人(ブリテン島の原住民で未開人)だということ。最後の戦闘シーンは素肌にペインティングを施した悩殺ピクト人スタイルで、弓芸を披露、アマゾネスのようにワイルドに闘う。それはそれで魅力的だけど、こんなグウィネヴィアはあり得ない。そもそも、ピクト人はサクソン人と組んでブリトン人を脅かしていた敵のはず。史実かも知れないアーサー像を描くつもりなら、あくまでも史実に忠実に徹してほしかった。
そんなわけで、あり得ない!要素も満載の映画だが、「アーサー王伝説」自体があり得ないエピソード満載の伝説なので、色々と研究が進んできた21世紀に、このようなロマンティックでない「アーサー王」作品が登場するというのは、まま、あり得ることと言ってよいのだろう。この映画は、いわゆる「アーサー王伝説」に特に愛着のない人がスペクタル映画として楽しむのにはおすすめ。日本映画『七人の侍』も手本にしているらしいが、戦闘シーンにはたっぷり時間をかけ、なかなか見ごたえがある。


とりあえず、必要に駆られて「アーサー王」映画2本を観ての感想。『キャメロット』というのもあるらしいから、観なくては。


『古代文明ビジュアルファイル』誌28号「古代人の素顔」には、遠野(足立夕佳)版「アーサー王」が登場します。

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Comments

今、「アーサー王」の世界にどっぷりハマっていて、ハマりすぎてワケわかんなくなっているところです。
確かに、「アーサー王」完成作ともいえるマロリー版でも、後半の主人公はランスロットの方ですよね。
アーサー王伝説って、大筋が通っていれば後は自由に創作可能なのかなと思えてきてるところです。マーリン主人公版もありかなと。

ただ、「エクスカリバー」ラファエロ前派の直流を汲む美しい映画だと思います。エレインが舟で流れてくるとことか、まさにそのもの。だからこそ、絵画でもよく描かれている最期のシーンが見てみたかったなと思うわけです。

Posted by: 阿璃子 | 2007.05.02 at 21:33

「エクスカリバー」は大好きな映画でして、mixiのプロフィールにも書いてあるほどでして(苦笑)えー、阿璃子さんがおっしゃるとおりの映画なんですが、けなされるとどうしても弁護したくなります(笑)
アーサー王伝説自体、アーサー王そのものがなんか影が薄いのではありますまいか。それは、やはり王という立場だと縦横無尽の活躍がしづらいからでしょう。まあ、日本には「あばれん坊将軍」などと、最高権力者が市井で暴れまくるというのもありますけどね。

Posted by: 龍3 | 2007.04.27 at 21:10

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2004年 アメリカ 127分 監督 アントワーン・フークア 製作 ジェリー・ブラッカイマー 脚本 デヴィッド・フランゾーニ 撮影 スラヴォミール・イジャック 音楽 ハンス・ジマー 出演 アーサー:クライヴ・オーウェン    グウィネヴィア:キーラ・ナイトレイ    ランスロット:ヨアン・グリフィズ    セルディック:ステラン・スカルスゲールド    マーリン:スティーヴン・ディレーン    トリスタン:マッツ・ミケルセン    ガウェイン:ジョエル・エドガートン...... [Read More]

Tracked on 2007.05.22 at 08:44

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