2008.07.02

実は良心的だったユダヤの「高利貸し」

 中世ヨーロッパでは、ユダヤ人の職業は厳しく制限されたため、やむなく金融業などのキリスト教徒には禁じられていた職業に手を染める者が多かった。

 当時、金融業者は利子に関わらず「高利貸し」と呼ばれ蔑まれた。しかし、実際はユダヤ人から借りる場合の利子はかなり低かった。ユダヤ教徒の生活の規範である『タルムード』では、文字通りの高利貸しで暴利を得ることは禁じられており、信心深いユダヤ人たちは教えに背いてまで儲けようとはしなかったのだ。

 西欧では、王侯貴族相手の金貸しで華々しい成功をおさめた宮廷ユダヤ人への羨望から、キリスト教徒にも金融業が許可されることになるが、ユダヤ人たちが締め出された途端に利子が高騰し、教皇はキリスト教徒の文字通りの高利貸しを無慈悲だと非難した。貴族たちは宮廷ユダヤ人を呼び戻すよう王に請願したが、キリスト教徒の金融業者の周到な根回しにより退けられた。

 その後もユダヤ人たちは活躍の場を移しつつ『タルムード』の教えを守って金融業を続け、銀行・保険・証券など、現代に通じる金融システムを構築していった。大財閥に成長したロスチャイルド家は宮廷ユダヤ人の末裔である。

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2008.06.09

健全なる妄想のススメ、あるいはバートリ・エルジェーベト

言わなければわからない。
貴方が何を考えていようと、言わなければ誰にもわからない。

貴方の脳は貴方のもの。絶対不可侵の貴方のテリトリーの中で、貴方は完全に自由だ。

想像力をうんとはたらかせればいい。どんなに邪悪で変態な妄想をめぐらせようと、言わなければ、誰にもわからない。たとえそれで変なオーラが発生しても、勘のいい人に見透かされても、言わなければいい。

たとえ言ってしまったり、書いてしまったりしても、実行しなければいい。実行してしまったら、それこそ本当の変態。いや、犯罪者にもなり得る。狂人として後世まで語り継がれることになる。

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たとえば、バートリ・エルジェーベト(1560-1614)。650人の美少女の生血をすすり惨殺した希代の殺人鬼。ハンガリーの名家、そして近親結婚を繰り返し、狂気と残忍で知られる呪われた一族、バートリ家の姫。彼女は脳内で妄想を昇華させることができなかった。処女の血を浴びると美しくなるという妄想を妄想だけで終わらせることができなかった。そして、自らの欲望を実現することが可能な権力をもっていた。

かくして彼女は実行した。泣き叫ぶ少女たちを鞭打ち、生皮を切り裂き、性器や指を切断し、スパイクのついた球形の檻に入れ血を流すのを見て楽しみ、腕や乳房や顔に噛みついて生肉を食べた。650人とは彼女の自白による数字で、実際はもっと少なかったといわれるが、農奴の娘に飽き足らず、貴族の令嬢にまで手を出した。

流血の伯爵夫人。吸血鬼。性癖異常者。多淫者。黒魔術者。汚名にまみれ、歴史に名を残すことになった彼女だが、告発され、有罪となった後、妄想のみに耽る静かな余生が遺されていた。身分の高さゆえ、死刑を免れ、居城の寝室に幽閉され、死亡が確認されるまでの3年間、彼女はどうやって過ごしたか? 反省もしたかもしれないが、妄想に明け暮れていたに違いない。

想像力の欠如は狂気である。妄想力の未熟は犯罪である。貴方が社会に適応して健全に生きていくには妄想力を磨いていかなければならない。


※参考:Wikipedia

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2008.06.03

マニエリスム&バロック庭園奇譚

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 ヨーロッパの中世は暗黒時代ではなかったが、多くの文化が修道院の塀の内に匿われたまま育てられた。庭園文化はその最たるもので、中世前半期には可憐な百合も芳しい薔薇もただ聖母マリアのために修道院や教会の高い塀で囲まれた庭にのみ植えられた。

 ルネッサンスの到来は古代ギリシャ/ローマの庭園の美を再び花開かせた。イタリア式ルネッサンス庭園の均衡美はしかし、次第に荒唐無稽で虚無的なマニエリスムや、幻想性や躍動感にあふれるバロックの様式に変容した。この時代、グロテスクの語源となる「グロッタ」と呼ばれる洞窟を備えた珍奇な庭園がヨーロッパ各地につくられた。

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 マッジョーレ湖の島庭園イゾラ・ベッラは、誰が見ても空中庭園を連想する姿で浮かび、神々の像や帆立貝から水が噴き出す幻想的な水劇場を備えている。楽園ならぬ地獄の庭と呼ばれるボマルツォは、人食いの大口から入るグロッタや、蛇女、鳥女、三頭犬、巨大で残虐なヘラクレスなどの怪物、怪人の像が立ち並ぶ奇怪な庭園である。東方庭園の伝統を引く噴水は、奇抜な水仕掛けに変貌し、百噴水や水オルガン、10個以上の乳房から水が吹き出るアルテミス像などを備えたエステ荘などの水庭園も数多くつくられた。

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 ルイ14世の財政相フーケがル・ノートルにつくらせたヴォー・ル・ヴィコント城の庭園は、マニエリスム的キワモノ庭園とは一線を画するが、計算され尽したバロック的仕掛けに満ちていた。フーケはルイ14世を招き、無数の花火を打ち上げる火のショーや、無数の噴水が繰り広げるアクロバティックな水のショーなど、スペクタルに満ちた饗宴を催した。ラシーヌやモリエール名戯曲やラモーの名曲が演じられ、天才料理人ヴァテールの料理がふるまわれた、この総合芸術プロジェクトは大成功だった。ところが皮肉にも、あまりの出来のよさが悲劇を招いてしまった。王の凄まじい嫉妬を買ったフーケは終身刑となり、幽閉の身のまま生涯を閉じるという運命を辿ったのである。

800pxvesailles_the_garden_2 フーケの怨念が直接、王を没落させることはなかったが、ヴォー・ル・ヴィコントを羨んでルイ14世が完成させたヴェルサイユに築いた宮殿とその庭園は国庫を疲弊させ、フランス革命の遠因ともなった。


●参考文献
「庭園の世界史 地上の楽園の3000年」(ジャック・ブノア=メシャン/河野鶴代・横山正訳/講談社)
「ヨーロッパ庭園物語」(ガブリエーレ・ヴァン・ズイレン/小林章夫訳/創元社)
「ヨーロッパ100の庭園」(巌谷國士/平凡社))
「世界の七不思議」(ジョン&エリザベス・ローマー/安原和見訳/河出書房新社)
「図説英国庭園物語」(小林章夫/河出書房新社)
「庭園 機械仕掛のワンダーランド」(SD編集部編/鹿島出版会)

※画像はWikipediaより
 
 
※庭園文化史についてもっと詳しく知りたい方は『古代文明ビジュアルファイル』第69号【2008年6月3日発売】をどうぞ。現代への遺産「地上の楽園を求めて 空中庭園と庭園文化史」で空中庭園に始まる庭園の歴史を概説しています。上から写したイゾラ・ベッラ全景は一見の価値あり。

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2008.05.16

「ウルビーノのヴィーナス」はエロくない

Venus
国立西洋美術館で
「ヴィーナス展」
開催されています。

会期は残りわずか! 
まだの方はお急ぎください。


  ウフィツィ美術館の至宝 ウルビーノのヴィーナス
  古代からルネサンス、美の女神の系譜
  5月18日(日)まで 9:30〜17:30(金曜日は20:00まで)
  東京都台東区上野公園7ー7 国立西洋美術館

ウルビーノのヴィーナスさんといえば、元祖グラマラス系女神ともいわれる方なので、首都圏一円にポスターやフライヤー(チラシ)が出回ったら風紀上良くない? いえいえ、そんなことはありません。

首都圏の至るところにフライヤーが置かれていますが、教育委員会から苦情が出たという話は聞きませんし、会場前の等身大?のパネルの前で一緒に写真を撮る人も見かけます。ヴィーナスさんがあられもない裸体をさらしているのに、目のやり場がなくて困っている様子の人なんて一人もいません。

そう、この絵はいわれているほど、エロくないのです。ハッキリ言って、私の方が胸大きい!と、思っている方も多いはず。当時の美意識ではバストは小さい方が美人だったので、現代のセクシーな芸能人さんを見慣れている方には、むしろ清純に見えるのかも知れません。もちろん、エロティックな魅力にかけては、現代の巨乳美人にも負けませんが。

ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」は、似た構図ながら全く非なるジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」と比べられることが多いようです。別の美術館に所蔵されているので、実際に並べられているわけではないのですが、ヴェネツィア派をまとめた画集等では、制作年が近いこともあり、並べられて比較され論じられることが多いようです。全裸ながら聖母マリアのように聖なる雰囲気を漂わせている「眠れるヴィーナス」の隣に置かれたら、どうしても「ウルビーノのヴィーナス」の方が俗っぽくエロく見えるというもの。

でも、比べてばかりいないで、たまには「ウルビーノのヴィーナス」だけに注目しなければ、彼女の本質を見誤ることにもなりかねません。この「ヴィーナス展」にはジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」は出品されていません。これは片手落ちとか徹底不足とかでなく、快挙!です。「ウルビーノのヴィーナス」を「眠れるヴィーナス」なき「ヴィーナス展」で観るのはとても意義あることのように思えるのです。主役を一人に限定したからこそ、彼女の本当の魅力を存分に観ることができるというもの。

「ヴィーナス展」では、他にもたくさんの「ヴィーナス」が展示されていますが、全ては「ウルビーノのヴィーナス」の引き立て役。彼女こそが究極のヴィーナス。美の到達点なのです。ぜひ、ご自分の目で、生身の彼女の美を堪能してください

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2008.03.22

紫煙は名優 

 シェークスピアの時代にはタバコが大流行したが、彼の作品にタバコは登場しない。シェークスピア自身は愛煙家であり、一世風靡した愛煙ダンディー=ウォルター・ローリー卿とも親しかった。エリザベス女王時代は喫煙シーンもあったが、嫌煙王ジェームズ1世の治世に変わると総カットしてしまったともいわれる。魅力的な小道具、そして時には名脇役ともなるタバコをカットしてしまったとはもったいない話でもある。

200pxhumphrey_bogart_by_karsh_28lib タバコは舞台や映画で独特の演出効果を発揮している。日本の歌舞伎では、「弁天小僧菊之助」の喫煙シーン等が有名だが、舞台の上にくゆる紫煙や、キセルをもつ役者の艶かしい仕草が、えもいわれぬ美を醸し出していた。メリメの小説『カルメン』は、オペラや演劇、映画でも人気の高い作品であるが、当時の自由な女を象徴するシガレットの煙が彼女の魅力を引き立てた。セピア色の映画で、ハンフリー・ボガードやマレーネ・ディートリッヒ等、影のある男や謎めいた美女とともに紫煙が演じた名演技を目にした人も多いことだろう。


タバコについて、詳しくは↓コチラを書店でどうぞ!
第58号【2008年3月18日発売】 毒か? 薬か? 嗜好品タバコの歴史  ※足立夕佳=遠野阿璃子執筆


※私自身はタバコ吸いません。書くための参考までに吸ってみましたが、何かよくわからなかったです。

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2008.02.07

トマトをただ眺めて過ごしたかくも長き日々・・・

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トマトは南米アンデス地方原産。

ヨーロッパに渡ってきたのは16世紀。はじめて持ち帰ったのはアステカ文明を滅ぼしたコルテスだったといわれています。

トマトが食用として浸透するのには長い年月がかかりました。あまりにも鮮やかな赤い色が当時の人々にはなんとも強烈でエロティックにみえたのです。現代の私たちから見れば健康の象徴のようなトマトですが、こわごわとした悪の魅力がぷんぷんと漂う背徳の植物だったようです。園芸マニアの人はこのエキゾティックな珍奇植物トマトに魅せられて、あるいはコレクションの一つに加えたくて、庭に植えました。貴族の庭園のあずまやを囲む垣根などにもよく植えられていたようです。トマトは長い間、ただ眺めるだけの観葉植物、そして装飾植物だったのです。

これは、ドイツの植物オタクの司教さまのカルトな花園「アイヒシュタットの庭園」に植えられていたトマトの銅版画。現代のトマトよりいもボコボコとしていて確かに装飾的ですね。


トマトが大好きな方、もっと知りたい方は、コチラをどうぞ。
『週刊古代文明ビジュアルファイル52号』 トマトの数奇な旅路 毒草から健康野菜へ
足立夕佳=遠野阿璃子が執筆しました。今なら書店にあります。

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2008.01.21

パンか、ケーキか?

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「パンがないなら、ケーキを食べたらいいじゃない!」

今日1月21日はルイ16世の命日。しかし、この台詞を言ったのは、ルイ16世妃マリー・アントワネットではなくて、ルイ14世妃マリー・テレーズだったという説もあるので、これから書くことは「マリー・アントワネットの擁護」とは無関係です。

と、断ったうえで・・・・・・「パンか、ケーキか?」というのはとても微妙な問題。そもそも、人類が先に口にしたのはパン? それとも、ケーキが先?

わかっているのは、パンよりも、ケーキよりも、「お粥」が先だったということ。教養ある王妃なら、「パンがないなら、お粥を食べたらいいじゃない!」と言ったことでしょう。そして、こう言ったとしてもやっぱり、自分たちはパンを食べてるくせに、貧民には粥をすすれとはけしからん!と、非難されたにちがいありません。

Panpan小麦粉をこねて焼くパンやケーキは、小麦の食べ方としては、進化した形態。小麦はとりあえず加熱したら食べられるので、煮て食べるのが原初の食べ方だったそうです。小麦が栽培化されて、農業生産が安定した頃には、「お粥」が主食になっていたとのことです。

ある日の炎天下、お行儀の悪い人がお粥を食べこぼしてしまいました。石の上にこぼれたお粥が太陽の光でパリパリに焼かれて、美味しそうだから食べてみました。・・・美味しい! このシンプルなガレットがパンの起源ともケーキの起源ともいわれています。

パンとケーキ、どっちが先? を考える前に、まず、パンとは? ケーキとは? ということをはっきりさせておきましょう。主食として生きるために食べるのがパン、間食やデザートとして楽しむために食べるのがケーキ。そう仮定したら、軍配はパンに上がりそうです。でも、お粥を主食にしていた期間、この小麦粉の薄焼きはパリパリに食感を楽しむためのお菓子、つまりケーキだったかもしれません。実際、お粥好きの古代ローマの人たちは、パンよりもケーキを先に食べていたようです。

Cake発酵させたのがパン、甘くしたのがケーキ。こう仮定して、発酵酵素を入れて焼いたのと、蜂蜜を混ぜて焼いたのとどちらが早かったのか突き止めれば、どちらが先か決着がつきそうです。でも、二人の考古学者さんに直接質問したところ、現段階の研究でははっきりしないらしいのです。発酵させる技術が確立したのは古代ギリシャだったともいわれ、対して蜂蜜が小麦以前にも存在して利用されていたことは確かなので、ケーキの方にむしろ分があるかも知れません。

そんなわけで、「パンが先? それともケーキ?」という謎はまだ謎のまま。謎のままにしておいた方がパンもケーキも美味しく食べられるような気がします。


●参考文献
「お菓子の歴史」(マグロンヌ・トゥーサン=サマ/吉田春美訳/河出書房新社)
「名前が語るお菓子の歴史」(ニナ・バルビエ、エマニュエル・ペレ/北代美和子訳/白水社)
「パン」(レーモン・カルヴァル/山本直文訳/文庫クセジュ)
「コムギの食文化を知る事典」(岡田哲/東京堂出版)
「世界たべもの起源事典」(岡田哲/東京堂出版)
「食の文化を知る事典」(岡田哲/東京堂出版)
「たべもの超古代史」(永山久男/河出文庫)
「世界の食材探検術」(吉村作治/集英社)

パンについては、
【古代文明ビジュアルファイル34号】「歴史を育む大地の恵み パン食文化8000年の歴史」
※既刊(2007年9月25日発行)
ケーキについては、
【古代文明ビジュアルファイル64号】「甘美なる誘惑 パティスリーの歴史」※足立夕佳=遠野阿璃子執筆(2008年4月28日発行)

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2007.12.29

グロリアのメサイア

F0040869_064628_219回 グロリア少年合唱団 
「メサイア演奏会」 2007.12.23

グロリアのメサイア! 今年も行ってまいりました。クリスマスといえば、グロリアのメサイア。これを聴かないことには、年を越せません。

私にとっては、かれこれ4回めのメサイアですが、今回が最高!だったかも。いえ、毎年、そう感じるのですが。

今回はいつもにも増してソプラノパートに響きと輝きが冴え、ボーイソプラノの魅力を堪能することができました。もちろん、それだけではなく、アルトも男声合唱団の団員さんもまじえ健闘。テナー、バスも若々しく迫力あり、これぞ男声歌唱芸術!の粋を満喫できる演奏でした。

変声前の少年の声も素敵だけど、ファルセットも男声の魅力です。アルトのファルセットは男声ファルセット的な温度(あたたかい)があるけど、ソプラノがまだいけるという中高生のファルセットは、「カウンターテナー」というより、まだ立派な「ボーイソプラノ」。どちらも美しいです。 カトリックの歌唱には、由緒正しいファルセットの伝統があります。雪ノ下カトリック教会 を本拠地とする「グロリア少年合唱団」もその伝統を引き継いでいるのでしょう。

「メサイア」自体、合唱が主役で、独唱曲よりも合唱曲で盛り上がる構成になっているように思えるのですが、今年は特に、独唱よりも合唱に夢中になってしまいました。ソリストの皆さんの歌声ももちろん、いつもながら素晴らしかったです。そして、今年初めて気づいたのは、ソリストさんの歌は優しさに満ちているということ。例えば、アルトの最初の独唱曲は、もっと技巧的な歌い方も可能だけど、グロリアの先生でもある前田美樹さんは、あえて楽譜通りに歌います。すぐ後に合唱が同じ曲を歌うことを考慮してのことかも知れません。そんなところにも、このオラトリオの本質を理解した知性、そしてグロリア少年合唱団への愛を感じ、嬉しくなりました。

そんなわけで、今年も最高だったグロリア少年合唱団の「メサイア演奏会」 。毎年、12月23日(祝)に、鎌倉の雪ノ下カトリック教会 で開催されます。グロリア少年合唱団は、日本最古にして最大の少年合唱団。そして、日本唯一、男声だけの混声四部合唱を極めている合唱団です。変声後も、テノール、バスパートを務め、高校卒業時まで在団することができます。卒団後はグロリア男声合唱団で共に演奏活動を続けることができるので、テノール、バスパートがいっそう充実。もうじき50周年を迎えるグロリア少年合唱団の演奏をぜひ聴いてください!


次回:
第47回 定期演奏会 「VIVA!! ITALIA」
2008年3月28日(金) 開場 18:30 開演 19:00
鎌倉生涯学習センターホール 

グロリア少年合唱団公式サイト
グロリア少年合唱団公認サイト

※「メサイア」に関連するトリヴィア(雑学知識)
名もなき「主の僕」と『メサイア』

Continue reading "グロリアのメサイア"

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2007.10.22

国立新美術館を撮る女たち

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『月刊建材』誌の連載コラムに黒川紀章設計の「国立新美術館」訪問記を載せることにしたが、写真がない! 相方が業務用カメラで撮影した高画像の写真があるはずなのに、ない! もともと撮ってなかったのか、データを紛失したのかわからないが、締め切り目前にして、ない! ことが判明した。

それならば、自分で撮るっ! 近くに住んでいるわけではなく、多摩川を越えて上京しなければならないのだが、こういうときのフットワークは軽い。

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使い慣れているわけではないが自分の能力で取り扱い可能なカメラを携えて、乃木坂へ。到着すると即、激写! 中にいると変なアングルで撮りたくなってしまい、変な写真ばかりになってしまった。外へ出ると、何故か私のようなタイプの女性たちが思い思いの場所でケイタイを構えてこの建物を撮りまくっている。距離の関係で、私のカメラでは1枚で全景を撮ることはできない。隣の政策研究大学院の敷地に入れば撮れるかも知れないと、お邪魔してみると、そこにも私と同じようなタイプの女性がケイタイを構えて撮っている。

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「写真にしてしまえば、何でもなくなってしまうのよね。見たままの感動が映らないのよね」
と、ケイタイを構えてない友人に語りながら、その人は何枚も撮り続けていた。この建物は現代のバロックだというのが私の持論だが、私と同じようなタイプの女たちを惹きつける魅力があるらしい。

素人っぽくて恥ずかしい限りだが、この日撮った「国立新美術館」を羅列してみた。

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2007.10.15

「バロック」  合掌・黒川紀章氏

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「君の美しさはバロックだ」

とは、建築家・黒川紀章氏が女優・若尾文子さんにプロポーズしたときの言葉。

「バロック」は、17~18世紀の、動的な造形や、装飾の多用、効果的な光の使用、劇的な空間演出などを特徴とする芸術様式を意味し、ポルトガル語の「barocco=歪んだ真珠」が語源といわれる。

褒め言葉ではないような気がするし、若尾さんの美しさはバロックではないようにも思える。しかし、「バロック」はやはり殺し文句だ。ためしに「君の美しさは×××だ」に他の言葉を色々当てはめてみるとわかることだが、どう言われてもしらけてしまいそうだ(私の語彙の貧しさのためかも知れないが)。

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 例)君の美しさはマジックだ。
   君の美しさはミラクルだ。
   君の美しさはロココだ。
   君の美しさは太陽だ。
   君の美しさは、罪だ。
   君の美しさは、天国の花園だ。
    ※どれも陳腐なオベンチャラにしか聞こえないでしょ?

   君の美しさはシュールレアリズムだ。
   君の美しさは、ダダだ。
   君の美しさは、テロールだ。
    ※言われてみたい気もするけど、褒め言葉じゃない!

やはり、殺し文句は「君の美しさはバロックだ」。これしかない。褒め言葉ではないような気もするけど、バロックといえば、思い浮かぶのは絢爛華麗な芸術。均衡を欠くという欠点?はあるけど、それもまだ美しい。やっぱり若尾さんを例えるのは違うように思えるが、親しくおつきあいをした人にしかわからない魅力もあるのだろう。

黒川氏にとって、「バロック」は至上の形態であり思想だったのだろう。最近の作品「新国立美術館」は、一見シンプルな作品だが、あれは現代のバロックなのだろう。ファサードのカーテンウォールのあの流動的なフォルムは現代の記述をもって実現したバロックの理想形なのだろう。

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バロック至上主義の黒川氏は晩年においてバロック的人生に最後の花を咲かせた。都知事選立候補、参議院選立候補といった突然の派手な政治活動に首をかしげる人も多いだろうが、あれもまた一種のバロックだった。と、私は解釈している。氏の著作を読んで思想の研究をしたわけでもないが、「君の美しさはバロックだ」と言って若尾文子さんを射止めた黒川氏はバロックを至上とする美意識の持ち主だった。そんなふうに勝手に解釈して、バロックな人生を真っ当した建築家に哀悼の意を捧げる。

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